【メダロットS】攻撃時の威力計算手順の検証
こんにちは。メダロットSでおそらく勘違いされ続けてきた仕様が判明した、そんな検証です。
概要
今回は攻撃時の威力がどのような手順で計算されているかを調べました。メダロットSには攻撃パーツ自体の威力やメダロッターで引き上げられる威力の数値の表記があります。加えて基本的には技の威力を上げる効果には、その量までゲーム内で説明があります。しかし、ときにその曖昧な説明文の解釈には幅があり、ユーザーは本当の処理を知らないままプレイする必要があるという問題がありました。
具体例を挙げましょう。射撃技レーザーは一定CG値以上で威力を1.5倍する技ですが、たとえば性格パワーのメダルの威力ボーナスについても1.5倍が掛かるのかどうかについての記述はありません。こうした加算と乗算の順番に加え、他の乗算効果を重ねた際にそれらは和と積のどちらで計算されるのかわかっていませんでした。
乗算効果として地形相性、レーザー、ブレイク、シュートブースト、オプチカル、加算効果として強化チップ、メダロッター、メダルの性格ボーナス、脚部特性(シュラ等)を選び、これらを組み合わせて実際のロボトルで使用、ダメージを記録、これに過去に集めたダメージ計算の知見から実行威力を逆算し、各効果の計算手順を推定していきました。
その結果、以下の事実が判明しました。
- パーツ威力、強化チップ、メダロッターには乗算効果が掛かる。
- メダルの性格ボーナス、脚部特性(、パーツランク効果)には乗算効果が掛からない。
- 地形相性以外の複数の乗算効果が同時に与えられるとき、それらの倍率の和を取る。
- すべての加算・乗算効果の計算を終えた後、得られた威力に地形相性補正を掛けて実行威力とする。
1. から4. を式にまとめると次のようになります。
実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+ランク効果+脚部特性)*地形相性
加算式のバフには、本検証で扱ったものの他に、一部のパーツのランク効果(ライフル、ガトリング等)があります(素で失念していました)。luxさんの検証内でパワーライフル星5のランク効果である威力+400分に、技の乗算効果(脚部未破壊で1.5倍)が乗らないことが発見されています。また、わたしが次回記事で掲載を予定している検証にて確認した、デストロイの成功ボーナスにグラビティの効果が乗らないことからも類推するに、パーツランクによる加算効果は性格ボーナスや脚部特性と同じカテゴリになると思われます。
結果に戻ると、特に性格ボーナスに乗算効果が掛からないことや、乗算効果の重ね掛けが積ではなく和であることを勘違いされていた方は多いと思います。ロボトル中にステータスが確認できますが、そこに表記されている威力の値も実際の計算手順を考慮していません。
あくまで調査した技ないしプラス効果による乗算効果、脚部特性による加算効果は、ゲーム内にあるもののうちの一部です。例外は仮にあっても一部だろうと想定していますが、このゲームには検証をするたびにつくづく想定外の仕様に泣かされてきたので、追加の検証をしていくかもしれません。急ぎで知りたい効果、すでに判明している情報等あればぜひ教えてください。また、この検証は網羅的にやろうとしなければ比較的簡単に始められるため、個人でデータを取りたくなった際に当記事が参考になれば幸いです。
導入
まずはメダロットSの仕様を整理しましょう。攻撃技を有するパーツにはそれぞれ威力のステータスがあり、これを基礎として攻撃のダメージが発生します。この重要なステータスである威力には、パーツそのものの設定値の他に、値を増減させるものが存在します。それらの効果は、ゲーム内のテキストから大きく次の3つに分類できます。
(A) 任意の固定値を足すもの。
(B) 任意の倍率を掛けるもの。
(C) 効果量の明記がないもの。
分類(A)、(B)、(C)をここでは簡単にそれぞれ加算効果、乗算効果、その他の効果と呼ぶことにします。実装済みの各効果をこの3つの大分類に振り分けたので、確認してみてください(図1から図4)。威力と同じく攻撃側のダメージ参照ステータスである成功についても、ついでに同様の分類をしました。
さて、上の分類を基に、実行威力を計算するうえで不明なことは大きく次の3点です。
-
任意の加算効果に任意の乗算効果は掛かるのか。
-
任意の2つの乗算効果が同時に掛かるとき、その倍率は和と積のいずれなのか。
- その他効果に関する全般。
3つ目はひとまず置いておくとして、本検証で調査したのが1つ目と2つ目になります。
手法
調査対象
まず加算効果と乗算効果の関係について定式化します。パーツ威力aの技に、威力を+bする任意の加算効果(例:メダル性格ボーナス)と同1+c倍する任意の乗算効果(例:MFオプチカル)とを付与して攻撃したとき、その実行威力Aは
A=(a+b)*(1+c) (A)
A=a*(1+c)+b (B)
のどちらかで与えられることが予想されます。式(A)は加算効果にも乗算効果が掛かり、式(B)はパーツ威力だけが乗算効果の対象であることに相当します。
同様に2つの乗算効果の関係について定式化します。パーツの威力aの技に、威力を1+b倍する任意の乗算効果と威力を1+c倍する任意の乗算効果とを付与して攻撃したとき、その実行威力Aは
A=a*(1+b)*(1+c) (A')
A=a*(1+b+c) (B')
のどちらかで与えられることが予想されます。ここでは式(A')は2つの乗算効果の倍率が積、式(B')は和となることに相当します。
任意の2つの効果の関係がその他の効果の重ね掛け等の条件によらず一定だと仮定すると、調べたい2つの効果の組み合わせをしらみつぶしに式(A)か式(B)か判定していけば、あらゆる3つ以上の効果が同時に与えられたときの計算式に一般化することができます。
とはいえ、効果の種類が多すぎてそれらすべての組み合わせを調べることは不可能であるため、調査対象として適当にいくつかの効果だけを選ぶことになります。乗算効果には常に効果下にある地形相性補正、技としては固定倍率かつ貫通持ちで計測が容易なレーザー、ブレイク、プラス効果としては倍率の高いオプチカルと掛ける方法が簡便なシュートブーストを代表として選びました。加算効果には強化チップ、メダロッター、メダルの性格ボーナス、脚部特性(シュラ、一部バレットレイン、アーティラリー)と基本的なものを網羅しました。
実行威力の判定
マスクデータである実行威力およびその計算式をどうやって知るかですが、実際にロボトルを行い、知りたい効果を与えた状態で攻撃して得られたダメージから推定しました。ただし、過去に得たダメージ計算式をそのまま適用すると問題が生じたため、ダメージは威力の増加に
ダメージの決定
実行威力の判定には、最も発生頻度が高くサイズを増やしやすい防御時のダメージのみを用いました。ダメージは平均値から正負に対称な乱数を含む統計量で、標本サイズを大きくするほど誤差を小さくできます。詳しい説明は#3をご覧ください。式(A)と(B)との威力差が十分区別できる程度の誤差に収めることが要求されます。
また、成功もダメージを増やすステータスです(#2)。異なる成功を持つ標本を比較する際には、基準とする標本の成功からの差に0.4を掛けた値をダメージから引くことで補正をしました。
セッティング
データの収集場所について、スイチュウフローとノーマルレーザーを攻撃パーツとして用いた計測は、2021年12月29日から翌年の1月6日までの期間限定で開催されていた、進撃!ロボトル「年末年始のロボロボ大進撃!」のステージ10-8のビーストマスター*3機を相手にしました(図5)。相手の特徴として、3機の耐性、回避、補助スキルレベルが同一であり、防御役としてそれらを区別せずに記録ができます。また、デストロイを含まない射撃パーツのみの構成であり、こちらが射撃(ミラー)ガードを張れば相手はCG行動のみするようになり、攻撃MFだけ撃たれないようにゴーストメダルのcアブソーバーを設置しておけば、邪魔されることなく自由に攻撃役を動かすことができます(図6)。cアブソーバーは検証には実に便利で、ゴーストメダルが復刻されたことを心からうれしく思います。
また、バールーでの計測相手は同じく限定進撃のステージ10-10のゴッドエンペラー*3機を相手にしました(図7)。威力4倍となるHv3積であれば良いのではありますが、ビーストマスターと比較すると低装甲低射耐高回避で防御回数がやや稼ぎにくいため、前者の方がより適していると途中で気が付きました(バールーが最初の測定でした)。
急遽加えたライジュウコウの計測時はイベント期間外で、常設のストーリー第4部6-1VHのヒメダッカー*3機を相手にしました(図8)。
結果
低威力側での曲がり
では、各加算効果(性格ボーナス、メダロッター、強化チップ、脚部特性)に任意の乗算効果が掛かるのかを見ていきます。
男型右腕射撃アンチシーであるスイチュウフロー星5lv75(成功704、威力346)に各加算効果を付与して得た防御時のダメージが表1です。
表1
成功 | パーツ威力 | 加算効果 | 乗算効果 | 式(A) | 式(B) | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スイチュウフロー | 844.8 | 346 | - | 1.2 | 415.2 | 415.2 | 76 | 7.27 | 289 | 1.5 | - |
威力IV+III | 844.8 | 346 | 50 | 1.2 | 475.2 | 465.2 | 75 | 7.18 | 348 | 2 | 保留 |
おめシスカリン | 844.8 | 346 | 162 | 1.2 | 609.6 | 577.2 | 39 | 7.05 | 489.5 | 4.5 | 保留 |
シュラ | 844.8 | 346 | 200 | 1.2 | 655.2 | 615.2 | 88 | 7.1 | 542.5 | 2.5 | 保留 |
パワー | 844.8 | 346 | 300 | 1.2 | 775.2 | 715.2 | 46 | 7.11 | 682.5 | 5.5 | 保留 |
選んだ4つの加算効果はいずれも成功は変えず威力を表中の値ずつ加算することができます。ここでの乗算効果は地形相性Sであることの補正で、その量は1.2倍です。これらの加算効果と地形相性の関係について、手法の節で考えた2通りの式(A)…加算にも掛かると式(B)…加算には掛からないにより求めた威力を表1に並べています。乱数幅の詳しい説明は#3に譲りますが、簡単に意味を述べると最大で7.2%程度を取るダメージの振れ幅のことで、これが広く取れているほどより真の平均ダメージに近いものが得られていると期待できる質の良い計測といえます。誤差範囲は99%信頼区間としました。
得たダメージをそれぞれ実行威力がすべて式(A)であると仮定して散布図にしたのが図9、すべて式(B)であると仮定して散布図にしたのが図10です。このとき各点が直線上に並んでいなければ、仮定が誤りであることがわかります。
一見図9、図10とも直線に見えますが、実はどちらも誤差では説明できないずれが生じました。そもそも回帰直線の傾きはそれぞれ1.09、1.30と、#2で得た1.46とはかけ離れています。この傾きの解離は、5点の式(A)と式(B)の組み合わせを変えても説明ができません。
この段階では説明ができないのですが、実は原因はわかっています。どうもダメージは威力の1次関数であるというこれまでの結論が誤りだったようなのです。威力対ダメージのグラフはより詳細に調べると曲がっていて、特に低威力側で傾きは著しく寝るようになっていることが、同時に行った調査で判明しました(#4で公開予定)。
各加算効果と地形相性の関係
気を取り直して地形相性がどの加算効果に乗るのかを見ていきます。低威力側で取ると傾きの変化が威力の逆算の邪魔になることがわかったため、使用パーツを男型左腕レーザーのライジュウコウlv90(成功963、威力1569)に変更しました。また、収集場所もストーリー第4章6-1VHのヒメダッカーに変わっていることにご注意ください(記事にまとめるまで図9で地形相性の説明ができると勘違いしており、気付いたときには進撃が終わっていました)。また、スイチュウフローでの調査では、効果なし同士で比較できる同成功で異なる威力を持つ他のパーツ単体でのデータを取っていなかったことも解析を難しくしました。そのため今回は、ほぼ同じ成功と遠すぎない威力を持つメガトルレーザーlv90(成功、威力)についても同時に取得しました。各加算効果を付与したデータと合わせて表2に示しました。攻撃機体の地形相性はすべてSです。
表2
成功 | パーツ威力 | 加算効果 | 乗算効果 | 式(A) | 式(B) | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
メガトルレーザー | 1160.4 | 1630 | 0 | 1.2 | 1956 | 1956 | 178 | 7.12 | 2976 | -2.9 | 6 | - |
ライジュウコウ | 1155.6 | 1569 | 0 | 1.2 | 1882.8 | 1882.8 | 154 | 7.23 | 2865 | 0 | 6.5 | - |
威力V+V | 1155.6 | 1569 | 100 | 1.2 | 2002.8 | 1982.8 | 139 | 7.13 | 3043 | 0 | 7.5 | 式(A) |
シュラ | 1155.6 | 1569 | 200 | 1.2 | 2122.8 | 2082.8 | 143 | 7.22 | 3228 | 0 | 8 | 式(B) |
パワー | 1155.6 | 1569 | 300 | 1.2 | 2242.8 | 2182.8 | 139 | 7.21 | 3419 | 0 | 9 | 式(B) |
アラセ | 1155.6 | 1569 | 324 | 1.2 | 2271.6 | 2206.8 | 146 | 7.27 | 3457.5 | 0 | 8.5 | 式(A) |
得たダメージをそれぞれ実行威力がすべて式(A)であると仮定して散布図にしたのが図11、すべて式(B)であると仮定して散布図にしたのが図12です。
図11を見ると、パーツ単体で取った2点を通る直線上には、高威力側の2点がわずかに上方にずれるものの、およそ乗っていることがわかります。このずれは加算なしの2点間の誤差範囲内の最大の傾きを取るような直線よりは十分下方にあることから、威力推定を疑う材料にはなりません。あるいはここでもわずかに下に凸であることを示唆している可能性があります。一方で式(B)で威力を算出した図12では、どの点も直線から外れています。また、図11の5点の回帰直線の傾きは1.54と、比較的過去のダメージ計算式の係数と近く、くわえて、同じ場所で同じくスキルレベル99の射撃で取られたluxさんのデータの傾き1.54とも一致しています。2つの図から、この威力範囲ではダメージは威力にほぼ比例し、かついずれの点も式(A)に基づいて威力を出すと解釈するのが自然です。したがって、地形相性補正はパーツ威力だけでなく、性格ボーナス、メダロッター、強化チップ、脚部特性のすべてに掛かることがわかりました(式(2))。
実行威力=(パーツ+チップ+メダロッター+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (2)
オプチカルと地形相性
ライジュウコウ系列(表2)を比較対象とする1点の標本が表3です。これは男型右腕ブレイクのビッグノイジーlv90(成功972、威力745)をオプチカル下で取ったものです。オプチカルは射撃技の威力を2倍すると説明されているMFです。S地形下で2つの乗算効果で式(A')2.4倍あるいは式(B')2.2倍のどちらになるかを確かめます。
表3
成功 | パーツ威力 | 乗算効果1 | 乗算効果2 | 式(A') | 式(B') | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ビッグノイジー+オプチカル | 1166.4 | 745 | 1.2 | 2 | 1788 | 1639 | 81 | 7.13 | 2729.5 | -13.1 | 11.5 | 式(A') |
図11の6点に式(A')にて威力を仮定したブレイクを加えたグラフが図13です。オプチカルなしの6点の回帰直線に誤差範囲内で乗っています(ただし、最大の乱数幅を考慮すると真の平均値は直線から上方に外れていると見られ、この威力帯でもわずかに下に凸の曲線であることが示唆されます)。一方で式(B')で得られる威力は1639で、これは傾向から逸脱します。したがって、2つの乗算効果である地形相性補正とオプチカルが同時に与えられるとき、その倍率は2つの効果の積となることがわかりました(式(3))。
実行威力=パーツ*(1+乗算効果a)*地形相性 (3)
各加算効果とオプチカル、シュートブースト
ひるがえってスイチュウフロー系列(表1)に戻ります。先の調査で地形相性補正は式(A)に基づき各加算効果に掛かることがわかっています。改めて図10ではなく図9が正しく、やはりグラフは下に凸に曲がっていることになります。次に、他の乗算効果(オプチカル、シュートブースト)を各加算効果と同時に与えたものを取り、それらの関係を調べました(表4)。以降、地形相性は全体に掛かるとして表中の表記は省略しています。
表4
成功 | パーツ威力 | 加算効果 | 乗算効果 | 式(A) | 式(B) | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スイチュウフロー | 844.8 | 346 | 0 | 1 | 415.2 | 415.2 | 76 | 7.27 | 289 | 0 | 1.5 | - |
パワー | 844.8 | 346 | 300 | 1 | 775.2 | 775.2 | 46 | 7.11 | 682.5 | 0 | 5.5 | - |
パワー・シュートブースト | 1013.8 | 346 | 300 | 1.2 | 930.2 | 858.2 | 33 | 6.8 | 845.5 | -67.6 | 9 | 式(B) |
パワー・オプチカル | 844.8 | 346 | 300 | 2 | 1550.4 | 1190.4 | 34 | 6.9 | 1203 | 0 | 12.5 | 式(B) |
おめシスカリン | 844.8 | 346 | 162 | 1 | 609.6 | 609.6 | 39 | 7.05 | 489.5 | 0 | 4.5 | - |
おめシスカリン・シュートブースト | 1013.8 | 346 | 162 | 1.2 | 731.5 | 692.6 | 29 | 6.78 | 693 | -67.6 | 8.5 | 式(A) |
おめシスカリン・オプチカル | 844.8 | 346 | 162 | 2 | 1219.2 | 1024.8 | 49 | 6.95 | 1244.5 | 0 | 9 | 式(A) |
シュラ | 844.8 | 346 | 200 | 1 | 655.2 | 655.2 | 88 | 7.1 | 542.5 | 0 | 2.5 | - |
シュラ・シュートブースト | 1013.8 | 346 | 200 | 1.2 | 786.2 | 738.2 | 61 | 6.69 | 703 | -67.6 | 4 | 式(B) |
シュラ・オプチカル | 844.8 | 346 | 200 | 2 | 1310.4 | 1070.4 | 55 | 7.19 | 1050.5 | 0 | 7 | 式(B) |
威力IV+III | 844.8 | 346 | 50 | 1 | 475.2 | 475.2 | 75 | 7.18 | 348 | 0 | 2 | - |
威力IV+III・シュートブースト | 1013.8 | 346 | 50 | 1.2 | 570.2 | 558.2 | 88 | 7.2 | 500 | -67.6 | 2 | 式(A) |
威力IV+III・オプチカル | 844.8 | 346 | 50 | 2 | 950.4 | 890.4 | 82 | 7.24 | 898 | 0 | 4 | 式(A) |
オプチカルが掛かったもの同士でダメージを比較すると、パワー>おめシスカリン>シュラ>チップの順に大きくなりました。驚くべきことに、加算効果カリン(+162)とパワー(+300)、シュラ(+200)の間にダメージの逆転が起こっています。これはオプチカルがメダロッター分には乗り(式(A))、脚部特性分には乗らない(式(B))と考えることで説明ができます。図9の5点にカリンとチップは式(A)、パワーとシュラは式(B)で威力を仮定した4点を加え、新たに散布図としたのが図14です。
わずかに傾きの異なる2つの威力帯が滑らかに接続するように見えます。オプチカルの効果範囲がこのように限られているとする方が、単に大小関係だけでなく、定量的にも矛盾が生じません。ここからたとえば右から4点目の強化チップ(+50)にオプチカルが乗らないとしてプロットを左に60ずらすと、傾向から不自然に外れる場所に位置することになります。
シュートブーストは倍率が小さいためにオプチカルのような加算効果量とダメージの逆転は起こっていませんが、やはり同様の効果範囲が適用できます。図14にはカリンとチップは式(A)、パワーとシュラは式(B)で威力を仮定して4点を取っています。なお、シュートブーストによる成功差はダメージから補正してあります。
するとちょうど乗算効果なしの5点とオプチカルの4点の間を埋めるようにシュートブーストの4点が入りました。改めて全体としては直線ではなく凸関数となっています。こうしてオプチカル、シュートブーストのいずれについても、対象範囲はパーツ、強化チップおよびメダロッターであり、性格ボーナスと脚部特性には掛からないことがわかりました(式(4))。
実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a)+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (4)
また、加算効果なしでシュートブーストとオプチカルの2つの乗算効果を与えた標本(表5)は、倍率が積の式(A')の2.4倍、和の式(B')の2.2倍から得られるどちらの威力を仮定しても、系列の曲線に乗りませんでした。代わりに、シュートブーストの成功に掛かった1.2倍は残したまま、威力の倍率をオプチカル分のみの2倍とすると、他のデータの傾向とよく合います(図14)。この理由ははっきりしておらず、たとえばMFとその他のプラス効果が同時に掛かっている場合の特別な仕様なのかもしれません。
表5
成功 | パーツ威力 | 乗算効果1 | 乗算効果2 | 式(A') | 式(B') | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シュートブースト・オプチカル | 1013.8 | 346 | 1.2 | 2 | 996.5 | 913.4 | 53 | 7.25 | 814 | 746.4 | 5.5 | 例外 |
レーザー、ブレイク
新たな乗算効果として、威力1.5倍のCG条件を満たしたレーザーを導入しました。CG60以上で男型右腕レーザーであるノーマルレーザー星2lv30(成功551、威力716)に、加算効果として5種(表6)、地形相性Sとは別に乗算効果として2種を順に与え(表7)、防御時の平均ダメージをそれぞれ記録しました。
表6
成功 | パーツ威力 | 加算効果 | 乗算効果 | 式(A) | 式(B) | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ノーマルレーザーCG60~ | 661.2 | 716 | 0 | 1.5 | 1288.8 | 1288.8 | 64 | 7.27 | 1252 | 0 | 7 | - |
パワー | 661.2 | 716 | 300 | 1.5 | 1828.8 | 1648.8 | 83 | 7.02 | 1731.5 | 0 | 7 | 式(B) |
おめシスカリン | 661.2 | 716 | 162 | 1.5 | 1580.4 | 1483.2 | 77 | 7.04 | 1640.5 | 0 | 7.5 | 式(A) |
威力III+III | 661.2 | 716 | 40 | 1.5 | 1360.8 | 1336.8 | 76 | 7.18 | 1343.5 | 0 | 6.5 | 式(A) |
シュラ+200 | 661.2 | 716 | 200 | 1.5 | 1648.8 | 1528.8 | 87 | 7.29 | 1570.5 | 0 | 6.5 | 式(B) |
バレットレイン | 901.2 | 716 | 200 | 1.5 | 1648.8 | 1528.8 | 81 | 7.05 | 1689 | -96 | 7 | 式(B) |
表7
成功 |
パーツ威力 |
乗算効果 |
乗算効果 |
式(A') |
式(B') |
標本サイズ |
乱数幅(%) |
平均ダメージ |
成功補正 |
誤差 |
判定 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オプチカル |
661.2 |
716 |
1.5 |
2 |
2577.6 |
2148 |
74 |
7.00 |
2422.5 |
0 |
11 |
式(B') |
シュートブースト |
793.4 |
716 |
1.5 |
1.2 |
1546.6 |
1460.6 |
80 |
7.26 |
1543 |
-52.9 |
7 |
式(B') |
これもスイチュウフローにオプチカルを与えたときと同様に、カリンとチップにのみ光学特性の1.5倍が掛かっていると考えることで、各加算効果のダメージの並びを説明することができます。追加した脚部特性バレットレイン(成功+200、威力+200、相手の腕パーツを1つ以上壊してから計測)については、増えた成功分を補正して比較すると、威力の加算量が同じ+200であるシュラと同程度のダメージで、レーザーの1.5倍は同じく乗っていないと判断できます。
こうして得た加算効果付きレーザーの威力対ダメージの並びにオプチカル、シュートブーストを合わせようとすると、それぞれ式(B')に従って倍率を和で計算することになりました。これらをプロットしたのが図15になります。
さらに、被攻撃機が同じであることを利用して、スイチュウフローの系列とも並べてみました(図16、成功844.8で補正)。
2つの系列が滑らかにつながり、一本の凸関数を構成しています。これは各威力を矛盾なく定義できている証拠です。同時に過去の1次関数で近似したダメージ計算式の適用限界を示しています。
また、別の技の乗算効果として、Hvパーツ数nに応じて威力が1+n倍となるブレイク(女型右腕バールー成功991、威力502)についても同様の計測、解析を行いました(表8、表9)。今回はHv3の対ゴッドエンペラーであるため倍率が4倍と極めて高く、式(A)とするか(B)とするかで大きく威力が変わるため、効果の掛かり方がさらに判別しやすいです。
表8
成功 | パーツ威力 | 加算効果 | 乗算効果 | 式(A) | 式(B) | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
バールー | 1189.2 | 502 | 0 | 4 | 2409.6 | 2409.6 | 7 | 6.57 | 3168 | 0 | 194.5 | - |
威力I+I | 1189.2 | 502 | 20 | 4 | 2505.6 | 2433.6 | 27 | 7.13 | 3326 | 0 | 44.5 | 式(A) |
パワー | 1189.2 | 502 | 300 | 4 | 3849.6 | 2769.6 | 13 | 5.62 | 3748.5 | 0 | 90 | 式(B) |
おめシスカリン | 1189.2 | 502 | 162 | 4 | 3187.2 | 2604 | 11 | 6.44 | 4311.5 | 0 | 145 | 式(A) |
アーティラリー | 1549.2 | 502 | 300 | 4 | 3849.6 | 2769.6 | 14 | 6.1 | 3965 | -144 | 94.5 | 式(B) |
表9
成功 | パーツ威力 | 乗算効果 | 乗算効果 | 式(A') | 式(B') | 標本サイズ | 乱数幅(%) | 平均ダメージ | 成功補正 | 誤差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オプチカル | 1189.2 | 502 | 4 | 2 | 4819.2 | 3012 | 11 | 6.05 | 4119 | 0 | 130 | 式(B') |
シュートブースト | 1427.0 | 502 | 4 | 1.2 | 2891.5 | 2530.1 | 15 | 6.48 | 3509.5 | -95.1 | 82 | 式(B') |
ブレイクの乗算効果もレーザーと同じくメダロッターと強化チップには掛かり、性格ボーナスと脚部特性には掛からないかつ、地形相性とは積、オプチカルとシュートブーストとは和とすると、ダメージが連続的な並びとなりました(図17)。
ここまでで調べた地形相性補正を除く4つの乗算効果(オプチカル、シュートブースト、レーザー、ブレイク)は、共通した4つの特徴があることがわかりました。メダロッターと強化チップには掛かること、性格ボーナスと脚部特性には掛からないこと、地形相性との倍率は積、その他互いとの倍率は和となっています。これを未調査の乗算効果にも同様に適用されると予想すると、実行威力をより一般化した式(5)で求めることができます。
実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (5)
考察
加算効果のランク効果
概要でも触れましたが、加算式のバフには、検証時忘れていた一部のパーツのランク効果(ライフル、ガトリング等)があります。luxさんの検証内でパワーライフル星5のランク効果である威力+400分に、技の乗算効果(脚部未破壊で1.5倍)が乗らないことが発見されています。また、わたしが次回記事で掲載を予定している検証にて、デストロイの成功ボーナスにグラビティの効果が乗らないことがわかっています。これらから類推するに、パーツランクによる加算効果は性格ボーナスや脚部特性と同じカテゴリになるというのが現在の見立てです(式(1))。
実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+ランク効果+脚部特性)*地形相性 (1)
一般化の限界
導入の図1から4のように、実装されているバフの種類は膨大です。シュラ(とバレットレインとアーティラリー)の計測だけで一口に脚部特性とくくったのには正直無理がありますし、特定の効果について絶対にこうだと主張するには、その効果そのもので調べていくしかありません。他にないカテゴリにあるサクリファイスなどは特にそうでしょう。気になるものがあれば言ってください(もしかしたら調べるかも、というより皆さんもぜひやってみてネ、とりあえずダメージを記録するだけなら難しくないヨ)。
威力以外のステータスへの拡張
おそらく式(1)は、成功を筆頭に他のステータスについても適用されていると考えています。たとえば格耐・射耐について、乗算効果であるホプライト(ガードパーツ数*25%アップ)はロボトル中のステータス画面にて反映されたステータスが表示されるのですが、その際加算効果を持つメダロッターや性格ガードのメダルを装備すると、メダロッター分にはホプライトが乗り、ガード分には乗っていない数値となっています。これは今回の結果そっくりです。これらも気になるものや高倍率・高影響のものから調べてみると面白いかもしれません。
威力対ダメージ
ダメージが威力の1次関数ではなく凸関数だったという事実は、元々の目的ではありませんがこれまでの認識を覆す非常に重要な結果です(そのうえこのせいで今回の解析にとても苦労しました)。これについては次回記事ダメージ計算の試み#4で詳しく論じる予定です、ご期待ください。データの取得も解析も一通り終えており、残すは文章化だけなので、近日中に上がります、たぶん。
応用
これまで常識とされてきた(?)性格ボーナスや脚部特性に乗算効果を乗せた威力計算は誤りだったとわかりました。この事実はこれまでわたしが行った検証結果の中でも実用性に富んだ数少ない情報だと思います。ぜひご活用してください。
また、#2の成功・威力に関するダメージ計算では、標本の参照威力(と成功)が間違っていたことになり、わずかに係数が変わることになりました。いずれにせよ曲線である想定をしていなかったので、合わせて#4でブラッシュアップできたらと思っています。
まとめ
今回は攻撃時の威力がどのような手順で計算されているかを、ダメージから逆算する形で調べました。その結果、パーツ威力、強化チップ、メダロッターには乗算効果が掛かる一方、メダルの性格ボーナスと脚部特性(、ランク効果)には掛からないことがわかりました。さらに、複数の乗算効果の倍率は和で表され、最後に地形相性補正を式全体に掛けることで、矛盾の無い計測ダメージの説明が尽くせました。判明した計算手順は、これまでの常識を覆すものであり、今後も未検証の効果や威力以外のステータスに、検証を拡張する余地があります。
また、これまで威力の1次関数としてきたダメージの近似は一部の条件下でうまくいかないことが判明し、新しいモデルの必要性が示されました。
【メダロットS】ピリオド86
こんにちは。メダロットSにもついに対人戦が実装されますね。新しく追加された地形変更のMFも非常に興味深い。今回はひとまず、なかなか満足な戦いができた前期リーグの話。
前期リーグ(草原)
最終結果
前期のピリオド85はレート134の603位で終えました。これらの数字はごく平凡なものでしょう。ただ、うれしいのは無敗だったということです。
無敗へのこだわり
誰だって勝ちたいと思ってリーグをプレイしている、かどうかは知りませんが、少なくともわたしは毎試合勝利を目指しています。ここで問題になるのが一戦に対する一勝の価値、いわば一勝の難易度なわけですが、これは現メダリーグにおいては高くありません。なぜならプレイヤーは自操作、対して相手は賢いとは言えない(かつオート設定やメダルの性格等の癖を持った)AI操作だからです。プレイヤーもたくさん間違えますし、編成こそ実際にリーグで使用されているものではありますが、1機体の1回の攻撃だけで9択生まれるロボトルにおいて、この優位性は揺るぎないものです。こうして一戦必勝を突き進めた先の無敗という境地が、現実的な目標として存在しています。
どんなに名作と称えられるゲームも、漫然とプレイしては時間の無駄です。我々は人間なのですから、意志や目的を持って遊んでこそ面白味を感じられるというもの。わたしにとってのそれが、一勝への執着なのです。もっとも、スマホゲーは日々更新がされ、実生活を侵食する作業でもありますから、毎週気合を入れてやっているわけではありませんが。
ところで、別の楽しみ方として、上で書いたところの一勝の価値を上げる指針もあるかと思います。好きな機体なりこだわりの作戦なりを守り通すのが、代表的なそれでしょう。ただわたしはあまりやりません、負けるのが嫌だから。
編成
前置きが長くなりましたが、ここからは無敗を目指して編成したパーティーの紹介です。
環境には珍しいトラップ耐久パです。相手パーティーに合わせて格闘射撃どちらのトラップを置くか選び、妨害クリア、再生用のファーストエイドと準備が整えば、以降コンシールとフィールドリペアの連打で耐え忍んでいきます。
唯一の攻撃パーツ持ちである3番機は、トラップのダメージソースを有効に活かすことのできる全体特性のハンマーで早期無力化を図ります。さらにこちらの受けループの大敵であるレーダーサイトに対し、エフェクトクリアをぶつけて対策仕返します。
受け
耐え忍ぶと仰々しく書きましたが、さほど難しいことではありません。コンシールが掛かった状態であれば、いかなる高火力貫通攻撃を受けても、パーツを1つ与えるだけです。理論上、相手の攻撃より先にコンシールを入れ、かつ被パーツ破壊の合間にファーストエイドでの再生を挟み続けることで、相手の攻撃はいつまでも頭パーツまで届かないことになります。
この受けループの肝はあくまで味方3機のコンシール状態を維持することです。特に相手の攻撃機の数が多いほど、自陣のコンシールが剥がれた隙が生じやすくなります。要点は2つ。
- コンシールの回転が最優先。助ける99は必至、実行機体に他の仕事をなるべく与えない。
- 被ターゲットは機体間で分散して管理する。
1つ目は単純な話です。相手の攻撃パーツが健在であれば、1機体のコンシールが剥がれているだけでも大きな綻びに繋がりかねません。行動選択は常にコンシールから考慮するため、他の緊急性の高い行動(妨害クリア、ファーストエイド)や繰り返しが必要な行動(リペア)は別の機体に任せたいところです。また、初手の高火力行動に後れを取ることも許されないため、助ける振りをあまり妥協することは考えにくいです。
これはどの山を握るときも共通ですが、互いに万全の状態である初手でいかに大怪我しないかは編成段階で決めておくことです。貫通無効だけでなく、回避2倍の効果は軽視できません。ループの準備が整う前のクリティカルといった事故の確率を下げ、防御時のダメージさえも200~300は変わってきます。常勝のリーグロボトルに逆転勝ちなど期待しないことです。
要点2つ目は一度に味方全員に付与できるコンシールの特性を最大限活かす工夫です。1番機がスナイパー(右腕)、2番機がスピード(左腕)とハンターとガード、3番機がアシスト(右腕)とパワーをそれぞれ集めます。攻撃機が2体以上いる場合に、それらの標的が異なれば、コンシールを剥がされた直後に連打を浴びて複数パーツ失うリスクを下げられます。対AI操作ならではのテクニックです。
実際受け切りを困難にさせるのが同一機体への連続攻撃で、たとえば性格が揃えられたフルアタパーティーへの対策はほぼありません。幸いにもそうした編成は少なく、リーダーのヘイトであり高火力射撃を担うことも多いスナイパーについては、射撃フルアタの少なさもあって3機が連なっているパーティーに出会うことはついにありませんでした。
論点からは少しずれますが、機体間のみならず腕パーツ間のターゲット管理も大事です。充填中に行動パーツを壊されてアクティブラインまでたどり着けないと、エイドでの再生ができずジリ貧になってしまいます。逆にいえば、一度使えればおおよそ不要になる射撃トラップや妨害クリアは、頻出のスナ・スピに狙わせます。
最後に、リバースは頭部直撃といった味方の不慮の早期退場の保険として入れています。しかし、そもそも味方を落とされ、味方機体数<相手攻撃機体数となると破綻する戦法であるため、それを前提とするリバースの投入にはちぐはぐな感じが否めません。現7つの支援行動の中で唯一外せる可能性がある技だと思っています。
攻め
あくまでこのパーティーの出発点はコンシールを軸にした受けです。この成功があって初めて勝利が見えます。よってここで言う攻めには、相手リーダーを機能停止に追い込む勝利手段に加え、受けループを安定させるために相手の攻撃能力を速やかに削ぐ、いうなれば積極的な防衛が含意されます。とはいえこれらは基本的には同じダメージソースとして顕在化するものです(レーダーサイト剥がしのエフェクトクリアを除く)。
そのダメージソースの内訳は、各種トラップ(格闘、射撃、MFアタックトラップ)、3番機のハンマーとエフェクトクリア、そして各機の攻撃MFです。
第一のソースであるトラップは実に雄弁です。一度設置すれば、計5回該当する攻撃が行われたパーツだけにダメージを入れることができます。1回当たりのダメージは、相手の火力に応じて1200から1600程度。補助機が1回の行動で与えられる合計ダメージとしては破格です。
ただし、重要なのは合計ダメージよりパーツ破壊≒無力化に至るまでの回数および時間です。各機の腕や頭にも装甲チップが積まれることが当たり前になり、破壊までに腕でも4回費やす、すなわち3回はそのパーツによる攻撃を受けることも少なくありません。自陣の安定を狙った速やかな制圧手段としては、やや力不足です。
第二のソースであるハンマーとエフェクトクリアには、そうした早期無力化へ向けたトラップの補助という役割が一つにはあります。ゲキトラスは補助51振りの機体に対して防御・ヒット時で4000(1パーツ1000)程度のダメージを与えられます。これによりトラップによるパーツ破壊までの回数を減らせれば、一足早く攻撃を失敗させられるのです。加えて、トラップと異なり攻撃対象を都度選べるため、より危険な行動を持っている機体、頭部装甲が減っている機体などに、選択的・集中的にダメージを集められる点も見逃せません。
ちなみにデストロイは不要だと気付きました(楽ができる場面こそあるでしょうが)。こちらにはトラップとMFというガード無効の攻撃手段があります。そもそも1機体使ってこちらの1機体を止められることに何の支障があろうか、いやない。本当をいうとエフェクリをガードとレーダーサイトで挟まれると大分参ってしまうのですが、幸いにもされず。
第三のソースである攻撃MFは若干毛色が異なります。再三になりますが、あくまで始まりは受けです。受けが安定するまでは、たとえCGが貯まろうともコンシールやフィールドリペアが優先です。したがって、MFを打つ頃合いは必然的に受け切りが成立していることになります。ロボトル終盤や対補助同伴編成において、相手リーダーを倒し切り勝利を確定するための火力になります。特に、同系であるコンシール受けには、手数の関係上3番機単独で機能停止させる術がないため欠かせないものです。
ディスターバンス対策のクモメダル、それから充填・冷却・回避のバフ、かすり・回避成功によるCG増加が編成コンセプトとシナジーがあるとして性格スピードの2つのメダルを採用しています。とはいえ効果のほどは検証しにくいもので、スキルと脚部の相性の許す範囲で、MFを優先して選ぶなどしても良さそうです。
前期の全30戦において、最長の試合は残りカウント51での決着でした(もちろん過去のリーグ戦を通しても最長です)。多くの試合は10~20くらいカウントが進めば終わりましたかね。この試合は3度のヘッドショットを食らい(コンシールの意味を考えてくれ)、リバースの回数が尽きたところで再び3番機を失い、最終的に2機のMFのみでなんとか勝ったものでした。相手の最後の1機のエンジェルボディの回数が尽きるまで、延々とMFのかけっこをする不毛な終局。極端ではありますが、3機揃っての攻撃能力が無いと、再生持ちを落とし切るのに非常に時間を要することがわかる好例でした。
環境の変遷
パーティーの基本的な運用・役割については以上です。ここからはなぜその構築が無敗に最適と考え、使うに至ったかを簡単に書きます。
これまでわたしは、先手の脚部破壊を軸にした構築で無敗を目指していました。脚部の喪失に伴う速度の低下、被ダメージの増加、与ダメージの減少、さらにはリミットオーバーのペナルティ。単なる総装甲値の削減より遥かに大きなアドバンテージをもたらす脚部破壊は、いまさら書くまでもなくロボトルの基本です。
その先手脚部破壊に最適だとして用いていたのがアサッシンでした。自操作の優位性があるメダリーグでは、ツキのない下振れ時にいかに負けないかが肝要です。攻撃時に表れる下振れがかすり・回避。技の性質によってこの悲劇を避けられるアサッシンは、正真正銘無敗ロボトルの申し子といえましょう。実際これまで唯一無敗で1000位以内で終えられたピリオド69は、アサッシンに陶酔したフルアタ編成でした。
しかし、スラッシュバイトを入手して喜んだのも束の間、アサッシン環境に陰りが出ます。脚部装甲と耐性のインフレです。いかにクリティカル確定といっても、破壊できないことが確定ではどうしようもない。メダポンでの強化チップのばらまきに始まり、S界を震撼させたメダルイーター(レッグ)の登場。ワタルコラボの虎コウジは攻撃機も支援機も何でもござれ、そうして先月末追加のアルテミス(フィランソロピー)。
元々ボス機体の脚部はどれも規格外の性能を誇っていましたが、やはりメダルイーター辺りからボス以外の脚もインフレが加速した印象です。今後も確定一発では壊せない脚部がどの地形でも当たり前に出てくる環境が続くと思われ、構築の再考を余儀なくされました。
そうして行き着いたのが、この度の徹底した受け構築です。攻撃に伴う下振れは、アサッシン以外ではどうしても排除できません。一方で、コンシール状態での被弾は、被クリティカルという下振れにおいても、最悪でもパーツ1つというストッパーがあります。ヘッドショットだけは本当にどうしようもありませんが、かすり・回避と比べれば発生率は低く、受容できるリスクです。あとはそのループが安定するだけの火力と耐久性能のゲームバランスであるかですが、それはこの無敗という結果が何よりの証明となるでしょう。
おわりに
さて、今回は新しく運用したトラップ耐久パについて深掘りしました。今は珍しい編成ですが、ネタではなくあくまで勝利を追求したがゆえの結論だということが伝わっていればうれしいです。前回記事で火力パーツをまとめていても感じましたが、先手必勝型を探るとどうしても低成功パーツでハイリスクを追う必要がある環境に思えます。この編成は一戦に時間が掛かるというよりすぐ決着する試合が作れないために主流にはならないでしょうが、まだ改良の余地もありそうですし、今後も不定期に使っていくつもりです。
初めてのトラップパで遊んでいる。サイバーコアはごめんなさい。 pic.twitter.com/FRdYBqppHL
— 袴矢 (@hakamaya63) 2021年11月6日
Twitterではこんなことを言っていましたが、あくまで次の草原に向けた試運転だったのです、なんて。
今週は10週ぶりの純正限定リーグ。全勝は難しいので、勝率95%での1000位入りを目指します。それでは。
【メダロットS】ピリオド84
こんにちは。実に約2ヶ月振りの更新。今回は主に走った前期のメダリーグについて書きます(ダメージ計算の話もちょっとあります)。
前期リーグ(荒野、女型限定)
最終結果
早速結果から書くと、最終レート1309ptで80位を記録。初めて100位以内でリーグを終えることができました。ついでに初の100連勝、手動での100勝も達成。なんでも今期は過去最低の100位ボーダーだったらしいとはいえ、これまで一番プレイしたピリオド70でも76戦だったわたしにとっては十分大変でした。なんにせようれしい。
そしてこちらが最終的な編成。動きは非常にシンプルで、1番機の最速ディスターバンスで補助技を封じ、3番機のフラッシュorフリーズで邪魔な相手機体に行動をさせないまま、エースである2番機の高火力のサクリファイスorレーザーをクリティカルヒットさせる先手必勝型です。外すか当たるかで結果が変わりすぎるデザインが嫌いで、フラッシュの使用はこれまで避けていましたが、まあ当たるとべらぼうに強いですね。フリーズ無効かつA地形サクリ単体だと壊せないフィランソロピーのメタになったといえます。
アルテミスの登場
すでに編成にも載せましたが、ピリオド83のリーグを彼女の存在抜きに語ることはできないでしょう。そしてわたしのリーグへのモチベーションを燃やしてくれた存在でもあります。10月末のボス機体枠としてピックアップガチャに追加されたアルテミスです。
全4パーツとも優秀、純正での運用も面白そうですが、ここでは右腕のレーザーに注目してみます。
他の女型のレーザーとの差は一目瞭然です(表はwiki参照)。同じHvの右腕パーツであるフラミンマレットの上位互換、非Hvパーツとの比較では頭部も含め成功と威力で圧倒しています。レーザーに求めるもの⇒使いやすい火力と読み換えれば、この差は重要です。
火力ランキング
女型レーザーとして圧巻の性能であることがわかったうえで、もう少し踏み込んだ議論をします。アフェクションがいかに火力パーツ全体で見ても優れているかです。
現行のメダリーグでは、補助機体の有無などの違いは有れど、基本的には格闘もしくは射撃の攻撃技を使って相手のリーダーを先に機能停止させることで勝利する、ほぼこれしかありません。当たり前のことに思われるかもしれませんが、こうした前提の下に、火力=相手の装甲を速く大きく削るパーツの必要性が説かれます。
下の表は独自に厳選した30種の火力パーツについて、予想されるダメージで順位付けしたものです。表中の成功・威力はパーツレベル90時点でのランク効果を含めた数値です。威力について自身のCGを参照する技は30%で計算しています。また、サクリファイスのみ装甲Vチップ2枚挿しとし、その他チップ、メダルの性格ボーナス、メダロッターは無しとしています。
予想ダメージについて、防御無視攻撃はヒット時(式(2))、アサッシンはクリティカル時(式(3))、その他の攻撃は防御時(式(1))の計算結果です。
(1)
(2)
(3)
これらの式は、過去のダメージ計算式を元に、攻撃機体の攻撃スキルレベルは99、相手機体の格耐もしくは射耐と回避は地形相性込でそれぞれ1200、補助スキルレベルは51として補正を掛けたものです。成功と威力に地形相性を掛けたものをそれぞれ代入して使います(今回でいえば地形相性Sとして上の表の数値を1.2倍)。(作業が止まっているダメージ計算ですが)パーツの優劣を見る程度なら十分な式だと思っています。ただし、攻撃結果が変わった場合には当然順位も変動します。特に防御無視攻撃には甘い査定であることに留意してください。
さて、説明が済んだところでランキングを見てみましょう。ご存じデビルボディ(ゴ,ースト)がCG30の時点で堂々の1位。比類なき素の威力の高さに加え、防御無視属性が他の候補を押さえました。
2位のイービルハンドと7位のラストコンサートはそれぞれHvと非Hvのサクリファイスの代表として選出したもの。格闘射撃を問わず、イベント配布産を除くサクリファイスがどれもこの辺り。初手単独で出せる火力としては抜きんでています。
2つのサクリファイスに挟まれるようにして、HvのCG参照技の中でも特に強力なメンツが並びます。腕ゴースト/ショットとそれより下のCG参照技を単純に防御時の威力で比べると、はっきり差があるといえます。また、この表では、威力が連続的に変化するゴースト・チャージブレード系に対して、CG30でもCG95でも同威力の光学特性は基本的に甘い評価になっています。
サクリファイスとCG参照技が上位に連なる中、防御無視属性が効いてライトパンダー(パワーハンマー)とドラブローライズ(ブロウアウェイ)がそれぞれ6位と8位に食込みました。ドラブローライズはピリオド81(サイバー、男型限定)、ピリオド82(アリーナ)でキャリーバッグ(追加弾倉)に載せて使っていましたが、かなりやります。初手の充填で負けないために、威力バフのあるメダロッターではなくレトルトを付けていましたが、アサッシン感覚で破壊まで持っていける脚部の範囲は広いです。恵まれた成功値により、防御無視攻撃の難点であるかすりが出にくい点も高評価。ダークタイガーばかりが注目された印象ですが、セイバードラゴンも負けずに非常に優秀と見ています。
唯一の確定クリティカルであるアサッシンのレフトソーは12位。もしかすると4497という予想ダメージを意外と低く感じる人もいるかもしれませんが、あくまでこれはメダル・メダロッター抜きの結果です。式(3)に表れているように、クリティカル時は特にダメージに対する威力の係数が大きいです。性格パワーでダメージ+600、アラセでさらに+600は伸ばせると思ってもらえれば良いと思います。
ダメージ4000台前半辺りから、いろいろな技が載ってくるようになります。順位が下の方も含め、選んだパーツはいずれも(非Hv、女型、非頭といった制約も含め)各技の中でトップクラスの性能を誇るもの、リーグでよく目にするものです。しかしながら、上位と下位では腕パーツ1個分近いダメージ差があります。純正は別として、最も替えが効かないのは脚部より火力パーツかもしれません。
アフェクションのポジション
で、結局アルテミスはどうなったの?という話ですが、ランキングだと予想ダメージ4243で17位。ただし、わたしは順位以上に評価できるパーツだと考えています。
その根本は高い成功です。上では互換できるパーツの中でも比較的成功の高いものを多く選びましたが、それでも1000を下回るパーツが多数あるように、高火力パーツの成功は抑えめに設定されている傾向があります。特に、似たような運用が求められるCG参照技の中では出色であります。メダル、メダロッター、チップいずれの成功バフ量も大きくなく、パーツ差を補うには脚部特性やプラス症状含めそれなりにコストが掛かります。
成功ステータスの役割は、ダメージとヒット率の増加です。ダメージは先に取り上げたとおりです。ヒット率に関して、現環境ではリバース持ちを筆頭に(リーダーの)補助特化機体が頻繁にかすり・回避を誘発しています。攻撃機に関しても、一定数いる冷却ペナルティ無しのサクリファイスやアサッシン使いにも、攻撃の命中が求められます。そもそも後手を狙う戦法がどれほど採用されているのか疑問です。妨害クリアによって回避不可症状の付与を封じられることも、成功の重要性を補強するでしょう。とはいえヒット率に関してはデータを持っていないので、ふんわりとした話しかできないのですが。
成功ステータス以外にも、自壊・冷却ペナルティであったり、性別や部位であったり、充填・冷却であったりで上の順位のパーツの下位互換でないことをいちいち説明することはできますが、火力ランキングの趣旨に沿ってここまでとしておきます。
おわりに
さて、久々のブログはいざ書いてみれば前期リーグの直接の話はほとんど無かったですね。明日で終了らしい公式のランキング企画に乗っかってみました。更新をしなかった期間も別にネタが無かったとかプレイしていなかったとかいうわけではないのですが、今回はせっかくリーグを頑張ったので筆にも情熱を引っ張ってきました。次回の更新は内容も時期も未定ですが、良かったらまた読んでください。それでは。
【メダロットS】ダメージ計算の試み #3
こんにちは。ダメージ計算検証記事の第3弾です。今回は防御時の耐性、回避、補助スキルレベルの影響について報告します。
成功、威力についての調査をした前回記事はこちら。
はじめに
冒頭で触れた通り、今回は防御時に的を絞ったうえで、被弾側の耐性、回避、補助スキルレベルの3つのステータスがダメージに及ぼす影響を調べました。以下では、、の3つのステータスをまとめて簡単に"耐性三値"と呼ぶことにします。
前回までの検証で次のことがわかっていました。防御時のダメージは攻撃スキルレベルと耐性三値をある値(、、、)におよそ固定したときで、
(1)
のように成功と威力の1次項の和で表されます。そうしてこの(1)式の-930という定数項が、固定していた耐性三値によるダメージの軽減項に相当すると予測していました。
この逆を行ったのが今回で、特定の成功、威力、攻撃スキルレベルの攻撃に対し、耐性三値を変化させてダメージ計測を行いました。その結果、、、のとき、近似式として
(2)
を得ました。ここでです。つまり耐性三値をまとめた新しい変数の2次関数として、これらの寄与を与えることができます。#1では耐性三値はそれぞれ線型近似の引数として見なしていましたが、このたびの詳細な追加検証によりその仮定と結果が覆されることとなりました。
また、ここまで当然のように三値と呼んできましたが、式(2)から明白なように回避も防御時のダメージ軽減に作用しています。かすり時に回避が高いと被ダメージが小さくなることは経験からわかっていましたが、これまでの検証では回避は防御時ダメージには影響しないとしていました。本検証において自身が衝撃を受けた結果の一つです。さらにこれまで暗黙のうちに寄与がないとしていた(被攻撃機の)メダルレベルも、ダメージに有意な影響を与えないことを確認しました。
こうして、式(1)と合わせて5つのステータスがダメージに与える作用が明らかになりました。あとは残りのステータスである攻撃スキルレベルの作用の調査、くわえて個別に変化させたとおよびを同時に変化させても問題ない式を立てることができれば、6つの変数を持ちあらゆる状況におけるダメージを予測することができる”完全なダメージ計算式”が、防御時においては完成することになります。
手法
セッティング
超襲来のvsテオドラベリル2にて、相手3番機が使用するスカソルを検証用の攻撃パーツと見なし、自身が出撃させた任意の格耐、回避、補助スキルレベルの機体で受けたダメージを繰り返し記録しました。各被攻撃機の詳細は以下の通りです(耐性三値に影響を与えないセッティングについては割愛しています)。
(A) ゲソカケシタLv90
(B) ジェットスラップLv90、格耐I*2、ヒコオLv3
(C) ミニスカートLv90、格耐III、格耐I
(C') オチツカンLv90、格耐I*2、ヒコオLv3、スピード(slv150/0時)
(C") モコモコLv90、スピード
(D) ダイコクチョーLv90
(E) ジャガーノートLv90
(F) ブラックオーラLv90、格耐II、ヒコオLv3、スピード(slv99/51時)
(F') アンビリカルLv90、スピード(slv150/0とslv99/51時)
(F") りゅうのねどこLv82、格耐II、格耐I、シオカラLv20
(G) カバレットLv90、slv150/0、99/51、0/99、0/150
(H) ダッシュアタック(ホプライト+75%)Lv90
(I) オスワリLv90、サケカースLv20
(J) ブラックスタッグ(メダチェンジ)Lv90、サケカースLv20、スピード、slv150/0、99/51、99/1
(K) ダッシュアタック(ホプライト+75%)Lv90、サケカースLv20、スピード(slv0/150時)、slv0/0、150/0、0/10、0/20、0/30、0/40、99/51、0/60、0/70、0/80、0/90、0/100、0/110、0/120、0/130、0/140、0/150
末尾のslvに続くa/bはそれぞれ被攻撃機の攻撃スキルレベルと補助スキルレベルを表しています。特に記載のないものはslv150/0、99/51、0/150の3通りの計測を行っています。以下補助スキルレベルnの被攻撃機(X)の標本を(X_n)と略記することにします。
(C)と(F)にはそれぞれ3種類の脚部がありますが、これらは同一の格耐を持っています。計測および記録が迅速かつ楽に行えるため、検証初期において同一格耐脚部=同一耐性脚部と見なした機体を同時に出撃させたわけですが、後に回避もダメージに影響するとわかりました。したがって、異なる回避値を持つこれらは同一耐性脚部ではありません。計測データの追加、異なる耐性三値を持つ標本として分離することも考えましたが、検証に深刻な影響を与えないと判断し、3機を単純平均した回避を持つ同一標本として扱いました(以下まとめて標本(C)、(F)とします)。同様の誤解により、一部の標本で意図せず性格スピードによる回避バフが行われました。こちらは回帰モデルの考慮を行ううえで多少邪魔ではあるというだけで、計算の障害にはなりません。
以上(A)から(K)までの11種の防御機体が持つ格耐と回避の実行値を表1と図1にまとめました。低耐性・低回避、高耐性・低回避、低耐性・高回避、高耐性・高回避の四領域を不足なく網羅するようになっています。
表1 被攻撃機の耐性・回避
耐性 | 回避 | |
---|---|---|
(A) | 236.8 | 1677.6 |
(B) | 548.4 | 2262 |
(C) | 548.8 | 649.1 |
(D) | 920 | 567.2 |
(E) | 924 | 0 |
(F) | 1472.9 | 1017.9 |
(G) | 1488 | 0 |
(H) | 2171 | 865 |
(I) | 2208 | 0 |
(J) | 2210.4 | 2674.8 |
(K) | 2807 | 865 |
超襲来、vsテオドラベリル2
プレイヤー側を被攻撃役とする最大のメリットは、メダロッターを含めた高い耐性を持つ脚部を用意することができる点でしょう。バフの効果が多大かつ発動が容易である脚部特性ホプライトを有するダッシュアタックを所持していたため、より高い方の耐性である格耐を活かした格闘スキルを使用する相手に絞って計測場所を探しました。
これも重要なことですが、相手が使用する攻撃パーツの種類は少ない方が望ましいです。今回は耐性三値だけを変化させたいため、攻撃パーツすなわち成功・威力は1組で構いません。記録を迅速に進めるために、目的の攻撃以外のダメージは捨てることになります。また、仕様上3倍速で確認できる情報は行動パーツではなく技であるため、同種技を持つ異種パーツが装備されている機体による攻撃は、基本的に候補から外れることになります。
超襲来のvsテオドラベリル2の相手の編成は図2から図4の通りです。ここに検証対象となる被弾役の3機を出撃させ、基本的にはオートでチャージ行動を連打、3機とも脚部破壊ないし機能停止するまで攻撃を受け続けることになります。
この際の相手AIの傾向として、1番機は終始火薬ガード、2番機はコンシール後はCG連打からのMFサバイバルをループ、3番機はほぼソード連打でまれに(特に初手)デストロイを打ってきます。すなわちほぼ1種の攻撃だけを浴びることができ、本検証に適しています。また、2、3番機ともに腕狙いの性格であるため脚部が残りやすく、1戦で多くのデータを取ることが可能です。サバイバルで削られる分の装甲が無駄であるため、MFcアブソーバー持ちのゴーストメダルがあれば、さらに効率を高められそうです。極めてニッチではありますが注意点として、どうも戦車脚部など一部の脚部相手にはデストロイを多用する癖があるようです。これは編成のガード装備の有無にも関係なく、およそ因果関係の想像がつきません。戦車以外と同時出撃させた場合も、戦車にだけ使用してきます。
収集データの扱い
#2から大きく見直した部分です。同一の耐性三値を持つデータの集合を一つの標本と見なし、統計的扱いを行うことで乱数によるダメージの誤差を排除します。luxさんの検証から、防御時のダメージは有限の幅を持つ一様分布であるとします。以下で説明する母集団を一様分布とした統計誤差の算出方法もluxさんのアプローチにならいました。
さて、繰り返しになりますがダメージは母平均、幅を持つ離散一様分布で与えられるとします(図5、これは離散というより連続になっていますが)。このというのが各ステータスを反映させた内部の計算式によって与えられる平均ダメージ、これにの範囲で乱数が掛かり、実際のダメージとして出力されているとするということです。
、ともに整数であるので、からまでの間には個の値があることになります。くわえて一様分布であることから、どの値を取る確率も等しくで与えられます。これで母集団について必要な情報がそろいました。
今度は検証におけるダメージ計測作業についてみていきます。仮定した分布から回ダメージを計測する作業を試行して得られたダメージの最小値を、最大値をとします。このときからまでの間には個の値があることになります。
すると1回の試行でこの間の値を取る確率はであり、これを回繰り返したときの確率はとなることがわかります。ここで、となる最小のを実験的に得られた母集団の幅とします。
また、平均は計測した最小値と最大値の単純平均すなわちで求め、その誤差はを母集団の最小値ないしを同最大値としたときの幅で付けています(図6)。このときを大きくするほどは速やかに小さくなり(十分起こりうる確率から遠ざかっていき)、の幅を限定することができる、言い換えれば標本サイズを増やすだけ誤差を小さくできるということです。
結果
取得全データ
今回取った、また解析に用いたデータを表2にまとめました。回避の*表記は異種の脚部ステータスを平均した値です。乱数幅(実測)は観測値のうち平均から最大・最小値が何パーセント振れているかを表しています。乱数幅(上限)はとなる最小のをパーセント表記しています。(複数の脚部がまとめられているものを除いて)実際には7.3%程度で最大・最小乱数を記録しており、精度の高い平均ダメージが得られていると考えています。
表2 取得データ一覧
耐性 | 回避 |
標本サイズ |
乱数幅(実測) |
乱数幅(上限) |
平均ダメージ |
誤差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(A_0) | 236.8 | 1677.6 | 69 | 7.26 | 7.73 | 3911 | 20 |
(A_51) | 236.8 | 1677.6 | 113 | 7.23 | 7.52 | 3520.5 | 11 |
(A_150) | 236.8 | 1677.6 | 65 | 7.17 | 7.67 | 2847 | 15.5 |
(B_0) | 548.4 | 2262 | 85 | 7.00 | 7.38 | 3591.5 | 14.5 |
(B_51) | 548.4 | 2262 | 70 | 7.13 | 7.58 | 2980.5 | 14.5 |
(B_150) | 548.4 | 2262 | 97 | 7.06 | 7.40 | 2047.5 | 7.5 |
(C_0) | 548.8 | 649.1* | 74 | 7.75 | 8.18 | 3808 | 19 |
(C_51) | 548.8 | 649.1* | 67 | 7.26 | 7.74 | 3308 | 17.5 |
(C_150) | 548.8 | 691.7* | 108 | 8.17 | 8.50 | 2626.5 | 9.5 |
(D_0) | 920 | 567.2 | 84 | 7.03 | 7.41 | 3527 | 14.5 |
(D_51) | 920 | 567.2 | 78 | 7.00 | 7.41 | 2935.5 | 13 |
(D_150) | 920 | 567.2 | 74 | 7.16 | 7.59 | 2110 | 10 |
(E_0) | 924 | 0 | 45 | 7.00 | 7.71 | 3598 | 27.5 |
(E_51) | 924 | 0 | 33 | 7.07 | 8.06 | 3026 | 32.5 |
(E_150) | 924 | 0 | 50 | 6.44 | 7.40 | 2297 | 14.5 |
(F_0) | 1472.9 | 1017.9* | 91 | 7.36 | 7.73 | 3143.5 | 12.5 |
(F_51) | 1472.9 | 1135.2* | 103 | 7.46 | 7.79 | 2347.75 | 8.25 |
(F_150) | 1472.9 | 1076.5* | 119 | 7.50 | 7.79 | 1446.5 | 4.5 |
(G_0) | 1488 | 0 | 42 | 6.97 | 7.73 | 3241 | 26.5 |
(G_51) | 1488 | 0 | 33 | 6.88 | 7.85 | 2520.5 | 26.5 |
(G_99) | 1488 | 0 | 45 | 7.05 | 7.77 | 2048.5 | 16 |
(G_150) | 1488 | 0 | 96 | 7.05 | 7.37 | 1689 | 6 |
(H_0) | 2171 | 865 | 74 | 7.16 | 7.59 | 2799.5 | 13 |
(H_51) | 2171 | 865 | 69 | 7.15 | 7.63 | 1943 | 10 |
(H_150) | 2171 | 865 | 76 | 7.19 | 7.63 | 1057 | 5 |
(I_0) | 2208 | 0 | 51 | 7.22 | 7.86 | 2860.5 | 20 |
(I_51) | 2208 | 0 | 54 | 6.94 | 7.52 | 2054.5 | 13 |
(I_150) | 2208 | 0 | 79 | 6.92 | 7.34 | 1206.5 | 5.5 |
(J_1) | 2210.4 | 2674.8 | 76 | 7.22 | 7.65 | 2597.5 | 12 |
(J_51) | 2210.4 | 2674.8 | 55 | 7.03 | 7.61 | 1670.5 | 10.5 |
(J_150) | 2210.4 | 2674.8 | 42 | 6.84 | 7.60 | 1030.5 | 8.5 |
(K_0) | 2807 | 865 | 80 | 7.13 | 7.53 | 2531.5 | 11 |
(K_10) | 2807 | 865 | 107 | 7.18 | 7.48 | 2306.5 | 7.5 |
(K_20) | 2807 | 865 | 75 | 7.28 | 7.72 | 2115 | 10 |
(K_30) | 2807 | 865 | 96 | 7.17 | 7.51 | 1944.5 | 7 |
(K_40) | 2807 | 865 | 105 | 7.11 | 7.42 | 1793.5 | 6 |
(K_51) | 2807 | 865 | 86 | 7.18 | 7.54 | 1637.5 | 6.5 |
(K_60) | 2807 | 865 | 111 | 7.23 | 7.54 | 1527.5 | 5 |
(K_70) | 2807 | 865 | 103 | 7.18 | 7.50 | 1414.5 | 5 |
(K_80) | 2807 | 865 | 113 | 7.15 | 7.44 | 1314 | 4 |
(K_90) | 2807 | 865 | 107 | 7.16 | 7.47 | 1221.5 | 4 |
(K_100) | 2807 | 865 | 89 | 7.14 | 7.51 | 1134 | 4.5 |
(K_110) | 2807 | 865 | 54 | 7.13 | 7.74 | 1052 | 7 |
(K_120) | 2807 | 865 | 53 | 7.32 | 7.97 | 984 | 7 |
(K_130) | 2807 | 865 | 56 | 7.02 | 7.60 | 947.5 | 6 |
(K_140) | 2807 | 865 | 74 | 7.21 | 7.66 | 916 | 4.5 |
(K_150) | 2807 | 865 | 73 | 7.31 | 7.78 | 882.5 | 4.5 |
(K_スピ_150) | 2807 | 1025 | 111 | 7.31 | 7.62 | 882.5 | 3 |
補助スキルレベルの評価
耐性と回避を固定し、補助スキルレベルをおよそ10間隔で変化させた(K_0)から(K_150)までのダメージを図7に示します。
ダメージは補助スキルレベルに対し単調減少するものの、変化率は一定ではありませんでした。全領域にまたがった直線性が否定され、これまでの成功、威力の寄与とは様相が異なることがわかります。また、ここには様々なメダルレベル・メダルランクの標本が混在していますが、その違いによってダメージに異常が現れることはありませんでした。同じ補助スキルレベル0でメダルレベル0と150とのダメージを比較した際も有意差はなく、メダルレベル・ランクのダメージへの寄与は皆無であると結論付けられます。
グラフは概ね下に凸の曲線の傾向を示しており、図7には2次関数でフィットした曲線を併記しています。ただし、この曲線と誤差の範囲で完全に一致するわけではないです(図8)。この不一致は単に多項式の次数を増やしても解決せず、指数関数や対数関数を適用しても解消されませんでした。完璧に合う単純な式がない、いわば頼れる回帰モデルがない現状では、いたずらに式を複雑にしても仕方ないため、以降も線型近似ができないものについては2次関数でのフィッティングを中心に議論を進めていきます。
耐性の評価
図9は戦車脚部(回避0)の(E_150)、(G_150)、(I_150)について耐性対ダメージでプロットしたものです。こちらも補助スキルレベルを変化させた時と同様、1次関数には従わず、観測範囲内で下に凸の傾向を示しています。どのような曲線と見なすのが妥当か判断するために、より広範囲で多くの点を加えたいところですが、回避の影響がノイズとなります。
回避の評価
耐性についての掘り下げをすると同時に、回避の影響を見ていく必要が出てきました。同程度の耐性と異なる回避を持つ4グループ((B)-(C)、(D)-(E)、(F)-(G)、(H)-(I)-(J))について、回避とダメージの関係を図10(補助スキルレベル150)に表しました。
第一に注目したいのが、異なる耐性間で比較して絶対値が異なるのは当然として、回避の変化に伴うダメージの減少量まで異なっている点です。より具体的には、耐性が低いならびにダメージが大きいラインほど、回避の上昇によって多くのダメージ軽減がなされています。
脚部のラインナップの関係で、回避は耐性以上に、一方を固定したまま広く複数変化させる操作の実行が難しいです。そんな中唯一同耐性で3点を確保した(H)-(I)-(J)のグループを見ると、回避についてもやはり下に凸の傾向が見えました。これが二つ目のポイントです。
耐性と回避の同時評価
ここまで寄与が1次でない、相互に影響する、広域かつ多点の確保が難しいといった事情が浮かび上がり、多少強引にでも耐性と回避を組み込んだ議論に移っていく必要が生じました。
ではどのように2変数を扱うかですが、結論から書くと、耐性と0.2を掛けた回避の和を取ったものを、ダメージについての新たな独立変数とするとうまくいくことがわかりました(図11)。
この変換は定性的には、耐性、回避ともに下に凸の減少関数であること、一方の増大に伴って他方の寄与も小さくなることを反映します。
こうして並べることでいずれの補助スキルレベルにおいても一部の点を除いて単調減少となり、寄与の評価の見通しが良くなりました。さらに同時評価が可能となったことでより広い領域で多くのデータを並べることができ、下に凸の2次関数で近似することの妥当性が強化されました。一方で補助スキルレベルの評価と同様に、誤差で説明できない近似値からのずれが確かに存在しています。
耐性三値の同時評価
回避の組み込みが片付いたところで、いよいよ耐性三値を同時に評価していきます。
ここで耐性-回避を横軸に取った図11に立ち返ると、近似曲線の係数が異なる補助スキルレベル間で変化していることがわかります。これは耐性-回避の寄与と補助スキルレベルの寄与が単純な和では表せないことを意味します(もし和であれば縦軸方向に曲線を平行移動させたようになります)。
和の次に簡単な積はどうでしょうか。実はこれがそれなりにうまくいきました。その話の前に、補助スキルレベルについて改めて見ておきます。図12は点の多い(K)に加えてその他の耐性・回避を持つ標本についても補助スキルレベルの評価をしたグラフです。図11と図12に共通するのが、複数並んでいる曲線を横軸の負方向に伸ばしていくと、どれも似たような場所で交わるということです。
たとえば図12を見ると、x座標が-70の周辺で4本の曲線が互いに交わる、すなわち同程度のダメージを返すことが予想されます。実際のゲームではスキルレベルを-70に取ることはできませんが、この外挿には解析上の意味があります。それは補助スキルレベルが-70であるとき、耐性-回避のダメージへの影響はゼロになることを示します。図8についても同様の論理を適用できます。
これらの状況証拠を必要条件とすることを出発点として立てた、ダメージの近似式が式(2)です。
(2)
ここでです。耐性と(補正を掛けた)回避に補助スキルレベルを掛けたものの2次関数となっています。これは耐性三値の寄与を一つにまとめた新たな独立変数を持つような式と見ることもできます。実際にこの新しい変数を横軸に取ってグラフにすると、全データが概して一本の曲線上に並びました(図13)。実測値の近似値からのずれはおよそ100程度に収まり(図14)、今後ダメージ予測に応用していくうえで問題にならない程度の差だと考えています。
考察
回帰モデルが見つからない原因
今回独立に行った補助スキルレベル、耐性・回避のいずれにおいても寄与は曲線となり、かつ誤差範囲内で完全に従うような近似式を見つけるに至りませんでした。これには今も頭を悩ませています。測定しているデータがある計算式によって導かれたものであれば、(乱数の影響を排除した)測定データはそのまま元の計算式に従うはずだからです。
まずデータに不備がないかですが、サイズ不足により最小・最大乱数にほど近いダメージを記録できていないと思われる標本はいくつかあります。しかし防御時の乱数幅が±7.4%以下であるという立場からは、そのいずれについても真の平均値が誤差範囲内に十分含まれていると言え、ずれを説明する材料にはなり得ません。
次の可能性として、今回近似を試さなかったより複雑な式でゲーム内の計算式が与えられているということが挙げられます。図8や図14を見ると、2次近似に対して振動するような振る舞いが確認できます。これはより高次の項を加えたり、複数の異なる型の関数を組み合わせたりすることで少なくとも限定的には説明できそうではあります。しかしながら内部の式をいたずらに複雑にするのは、ゲームの開発・運営をする側からは邪魔になるとしか思えません。たとえば2次多項式関数の弊害として、頂点を境に寄与の正負が逆転してしまう問題があります。これに対し、うまく3次に増やしてやれば単調減少にすることができますが(これはこれで問題も持っていますが)、せいぜい増やしてそこまでではないでしょうか。
現在もっともらしいと見ているのは、変数あるいはダメージの範囲に応じて計算式が変わるという説です。開発側からすればこれはこれで面倒事はありそうですが、負のダメージが生じないといったような調整がもしかしたらやりやすいのかもしれません。しかし、この説は検証側からすれば厄介極まりない代物です。そもそも全領域での回帰を否定したうえで、式の境界条件(変数、その値)から各式そのものまで、莫大で精緻な調査を要求されることになります。直線のみの折れ線方式ならともかく、もし複数の曲線が滑らかにつながっているとなると、その証明は実質不可能ではないかと思います。正直やる気がしないです。
耐性三値とかすり、ヒット、クリティカル
防御時のデータとともに、その他の攻撃結果についての記録もしており、散らかりはあるもののある程度の集積ができています。解析作業がいつになるかわからないため、先に記録作業における肌感覚をごく簡単にですが書いておくことにします。
3種の攻撃結果時では防御時と同様に、耐性三値が相互にダメージ軽減に働いているようです。本検証で用いた近似式では耐性と回避の寄与が5対1でした。同様の式で類推すると、回避に対する耐性の寄与の割合は防御>ヒット、クリティカル>かすりといった感じではないかと思います。
また、膨大な記録作業を通じて強く感じるのは、耐性三値の攻撃結果の抽選確率への多大な影響です。これも具体的な数字は出せませんが、同じ補助スキルレベル0でも超高耐性脚部だと大抵防御しますし、他方同じ補助スキルレベル150でも低耐性・低回避だとヒット、クリティカルが目に見えて増えます。その逆もまた然りです。耐性三値のこうした影響は、被ダメージを総合的に見たときにダメージ軽減効果以上に大きいのではないでしょうか。
今後の展望
まずはこのまま防御時のダメージ計算式の完成を目指したいところです。残る手付かずのステータスである攻撃スキルレベルの影響の調査、そして個別に調査を行った変数の関係性のチェックが必要になるでしょう。
耐性三値評価のブラッシュアップも課題です。今回でいうと(B_150)など、どう近似しても外れ値となる点がいくつか存在しています。その周辺を探るなどして原因が見つかれば、より良い近似ないし根拠のある回帰モデルの確立ができるかもしれません。また、曲線というのは直感的に理解しにくいところがあるため、領域で分けるなどしてより実用に即した簡易な近似ならびに計算式の立案も考慮しています。
まとめ
今回は防御時における耐性、回避、補助スキルレベルのダメージへの影響を調査しました。その結果、これらの寄与は1次では説明できず、下に凸の曲線としてふるまうことがわかりました。2次多項式関数として立てた近似式は、広域で計算式として問題ない精度を返します。一方で内部の計算処理ははっきりしないままであり、今後も耐性における検証の余地があります。シリーズを通して残す未検証ステータスは攻撃スキルレベルのみとなり、6変数すべてを含む完全な予測式の完成が見えてきたといえます。
おわりに
寄与が1次でない、回避も影響するなど、今回はあらかじめ立てた仮説や予想が覆される結果が続出で、そのたびに仮設の立て直しと再検証を強いられる大変で面白い作業でした。報告に当たっては、なるべくそうした紆余曲折の苦労を排除して見通しを持った視点からの執筆を心掛けました。とはいえ誤解を招く表現や、重要事項の書き落としも多くあると思いますので、どうぞご指摘、ご質問ください。
【メダロットS】ダメージ計算の試み #2
こんにちは。今回の内容は、以前このブログに上げたダメージ計算記事の追加検証になります。検証作業に関する一般的なことはそちらの第一稿に書いているので、適宜合わせて読んでください。
はじめに
まず、前回までの進捗を簡単にまとめておきます。わかったこと、確認できたこととして、
- ダメージは4つの攻撃結果(かすり、防御、ヒット(防御無視)、クリティカル)ごと計算式が異なる。
- 平均ダメージは4つの攻撃結果それぞれについて、攻撃機の成功a、威力b、該当スキルレベルc、被攻撃機の該当耐性d、回避e、補助スキルレベルの合計fの6つの変数によって決まる。
- 平均ダメージは4つの攻撃結果それぞれについて、上記の変数についての線型結合によってある程度近似ができるが、求めた近似式が予測式としてあらゆる状況に適用できるかはわからない。
さらに、近似式が予測式として用いるのに十分と断言できない理由として、近似のために集めた実際のゲームにおけるダメージのデータに不備があることを指摘しました。具体的には以下になります。
- 攻撃スキルレベルが99以外のデータがわずかで、変数として加えることができていない。威力以外のその他のパラメータも標本間での差が小さく、変数として見なすのに十分とはいえない。
- 標本間で1種類のみパラメータの値に大きな差があるというものが少なく、各パラメータの違いがダメージに影響し合い、どのパラメータの違いによってダメージがどの程度異なるかの傾向をつかみにくい。
- 特定のパーツが標本の多数を占めることで、得られた近似式が実際の計算式と仮に大きく異なっていても、その限られた状況にさえ合っていれば問題ないように見えてしまう。
- 記録したデータのダメージが、システムの乱数によって同状況の平均ダメージからかけ離れている可能性を排除できない。
こうしたデータの不備の埋め合わせを追加で行っていく必要があります。手始めにこのたびは成功と威力の再評価および乱数による平均からのずれの排除を目的としました。
手法
セッティング
超襲来のvsユートピアン2にて、相手3機に検証対象の攻撃を繰り返し行いました。各攻撃行動の詳細は以下の通りです(表1、成功と威力に影響を与えないセッティングについては割愛しています)。すべてメダルレベル150、射撃スキルレベル99のメダル、地形相性はSです。
(A) カイチュウフロー星3Lv60、パワー、サラミLv6
(B) ヘビーウェイターLv90、CG0~29、スナイパー、カスミLv20
(C) ステップガンLv83、CG100、成功Iチップ1枚、キクヒメLv20
(D) ヘビーウェイターLv90、CG30~99、スナイパー、カスミLv20
(E) ヘビーウェイターLv90、CG100、スナイパー、カスミLv20
(F) ミュートハントLv85、成功Iチップ1枚、アラセLv20
(G) センチネルダイLv90、成功Iチップ2枚、スナイパー、キクヒメLv20、モンキーキャッチ(ウェポンマスター)
(H) ライジュウコウLv90、CG100、スナイパー、アリカLv20
(I) アールサイズLv90
表1 9種の攻撃行動
成功 | 威力 | |
---|---|---|
(A) | 664.8 | 916.8 |
(B) | 2026.8 | 916.8 |
(C) | 3009.6 | 916.8 |
(D) | 4053.6 | 916.8 |
(E) | 6080.4 | 916.8 |
(F) | 1598.4 | 588 |
(G) | 1599.6 | 2807.376 |
(H) | 1604.4 | 4262.4 |
(I) | 1599.6 | 6871.2 |
ご覧のように(A)から(E)は同威力で異なる成功を持ち、(F)から(I)はほぼ同成功で異なる威力を持ちます。これらの攻撃を特定の射耐と回避を持つ決まった相手に繰り出し比較することで、ダメージに対する成功だけないし威力だけの効果を測ることが可能となります。パーツの選定理由としては、威力ないし成功が所持パーツ中でほぼ同値にそろえられる3種以上を含む組み合わせがあること、かつ一方をそろえたラインナップ中でもう一方の値になるべく大きな変化が生じること、以上の2点が必須となります。
超襲来vsユートピアン2の相手の編成は図1から図3のようになっています。
2番機の脚部特性エルーシブが発動した場合は、与えたダメージを0.7で割ることで通常時のダメージに換算しています。また、相手装甲3倍のルールにより、非貫通技のプレスでも一度のロボトルで多くのデータを取ることができます。現在Hv積載量1以上の女型の飛行脚部(砂漠S)は存在しませんが、対地制御によってアールサイズのリミットオーバーを防止しました。デザートタイプ持ち脚部やMFインベーションを使っても良いでしょう。
攻撃相手としてこの場所を選んだ理由としては、第一にスキルレベルの振り分けが3機とも格闘99/助ける51であることが挙げられます。被ダメージに影響を及ぼすスキルレベルの標本における固定は不可欠です。検証初期の現段階では、メダロットSにおいて最も基本的な振り方である攻撃99/補助51を被攻撃機としたい旨があります。実はこの絞り込みだけでも、満足するステージは非常に限られます。それらのうち、個人的に1回のロボトル当たりの収集数が多く、なおかつ周回しやすいと感じたこちらに決定しました。
収集データの扱い
相手の脚部は三者三様です。成功と威力の評価を厳密に行うためには、異なる射耐と回避を持つ3機への攻撃を分離して扱う必要があります。しかし、今回それらの値が比較的近く、耐性の違いによりダメージが変化するデメリットよりも標本数を増やせるメリットの方が大きいと判断し、3機への攻撃データをすべて合算して評価をしました。すなわち耐性は全データで固定されていると見なすということです。
集めたデータは各攻撃行動(すなわち特定の攻撃ステータスを持つもの)について攻撃結果ごとに与ダメージの平均を求め、それをそのパラメータにおける固有のダメージとしました。このそれぞれの標本数が増えれば増えるほど、システムの乱数の影響が排除され、実際のゲーム内の計算式から算出されるダメージに近づくことになります(もちろん乱数が正負に対称である前提でですが)。換言すると、同一設定の標本数を増やすことにより、乱数による予想平均ダメージからのずれを取り除きます。
また、かすり時の評価は今回行っていません。というのも、高成功の攻撃ではまれにしかかすりが発生せず、加えて威力の調査についてもかすりの発生しないミサイルとアンチエア(回避不可でない相手に200回以上攻撃し、かすり・回避0回)を使用し、結果データ数が不十分だと判断したためです。
周回の実際
余談になりますが、周回は図4から図6で示すようなパーティーで行っていました。相手の助ける技による脚部性能の変化を防ぐためのディスターバンス、症状予防のための妨害クリアを備えています。特別ルールで守る技が使えない代わりに、ファーストエイドとフィールドリペア、MFハイパーリペアで自陣が崩壊しないよう努めます。
1回のロボトルにつきデータを取る攻撃行動は基本的に1種類だけで、ローテーションを該当パーツに指定しておくことで、フルチャージ等の準備後はオートで進めることができます。相手の脚部を壊してしまうと与ダメが増えるため、制約の許す限り腕狙いのメダルにすることで試行回数を稼ぐことができます。
2番機は初手ディスターバンス以降は妨害クリア連打、3番機は初手妨害クリア、2手目ファーストエイドまでを手動で行い、以後フィールドリペアを連打させます。ファーストエイドが切れるたびにオートを止めて再展開をし、回数が切れたらそのロボトルでの集計はほぼ終了となります。たまにMFハイパーリペアを入れたり、わたしが持っている脚部より速いものを使ったりすれば、安定して時間切れまで粘ることも可能でしょう。とはいえ弱い攻撃パーツでなければ時間切れよりまず先に相手3機の脚部を壊しきることになります。クリアによるコインが欲しいというわけでなければその時点でサレンダーしてしまって良いでしょう。
結果
成功の評価
同威力で成功の異なる(A)から(E)の攻撃行動の結果について、かすりを除く攻撃結果別に表2から表4にまとめました。表中の平均ダメージ欄の括弧内の数字は標準偏差です。最大値と最小値欄の括弧は平均ダメージとの比較です。本検証に限ってダメージ近似には使用しませんが、参考までに各耐性値を標本数で重み付けした平均として記載しています。
表2 成功の評価(防御時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) | 664.8 | 916.8 | 1022 | 53 | 802 (48) | 899 (+12.0%) | 730 (-9.0%) |
(B) | 2026.8 | 916.8 | 1046 | 8 | 1188 (68) | 1336 (+12.4%) | 1106 (-6.9%) |
(C) | 3009.6 | 916.8 | 1022 | 95 | 1607 (99) | 1806 (+12.4%) | 1428 (-11.1%) |
(D) | 4053.6 | 916.8 | 1092 | 10 | 1894 (98) | 2010 (+6.1%) | 1757 (-7.2%) |
(E) | 6080.4 | 916.8 | 982 | 77 | 2831 (174) | 3131 (+10.7%) | 2456 (-13.3%) |
表3 成功の評価(ヒット時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) | 664.8 | 916.8 | 1072 | 45 | 1408 (61) | 1501 (+6.6%) | 1299 (-7.8%) |
(B) | 2026.8 | 916.8 | 1046 | 7 | 2076 (89) | 2161 (+4.1%) | 1947 (-6.2%) |
(C) | 3009.6 | 916.8 | 1018 | 56 | 2825 (127) | 3038 (+7.6%) | 2562 (-9.3%) |
(D) | 4053.6 | 916.8 | 1097 | 6 | 3296 (72) | 3411 (+3.5%) | 3230 (-2.0%) |
(E) | 6080.4 | 916.8 | 991 | 19 | 4912 (252) | 5266 (+7.2%) | 4577 (-6.8%) |
表4 成功の評価(クリティカル時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) | 664.8 | 916.8 | 1057 | 14 | 1954 (84) | 2104 (+7.7%) | 1831 (-6.3%) |
(B) | 2026.8 | 916.8 | 996 | 3 | 2740 (200) | 2947 (+7.5%) | 2547 (-7.1%) |
(C) | 3009.6 | 916.8 | 1003 | 63 | 3928 (214) | 4430 (+12.8%) | 3476 (-11.5%) |
(D) | 4053.6 | 916.8 | 1084 | 2 | 4537 (196) | 4675 (+3.1%) | 4398 (-3.1%) |
(E) | 6080.4 | 916.8 | 992 | 61 | 6785 (349) | 7454 (+9.9%) | 5955 (-12.2%) |
さらに、これらについて成功対ダメージでプロットしたものが図7から図9になります。
縦軸方向の正負のエラーは標準偏差で付けています。いずれの攻撃結果についても高い直線性が現れ、全領域で傾きが一意に決まりました。
威力の評価
成功の評価と同様に、威力についても同成功異威力の(F)から(I)の攻撃行動の結果について、かすりを除く攻撃結果別に表5から表7にまとめました。表中の平均ダメージ欄の括弧は標準偏差、最大値と最小値欄の括弧は平均ダメージとの比較になります。各耐性値は標本数で重み付けした平均です。
表5 威力の評価(防御時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(F) | 1598.4 | 588 | 1072 | 15 | 543 (33) | 599 (+10.3%) | 499 (-8.1%) |
(G) | 1599.6 | 2807.4 | 992 | 107 | 3704 (176) | 4109 (+10.9%) | 3704 (-8.5%) |
(H) | 1604.4 | 4262.4 | 1016 | 86 | 5738 (261) | 6260 (+9.1%) | 5232 (-8.8%) |
(I) | 1599.6 | 6871.2 | 1054 | 61 | 9852 (447) | 10633 (+7.9%) | 9011 (-8.5%) |
表6 威力の評価(ヒット時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(F) | 1598.4 | 588 | 959 | 20 | 1264 (64) | 1358 (+7.4%) | 1149 (-9.1%) |
(G) | 1599.6 | 2807.4 | 998 | 96 | 4620 (218) | 5011 (+8.5%) | 4248 (-8.1%) |
(H) | 1604.4 | 4262.4 | 1002 | 29 | 6634 (282) | 7094 (+6.9%) | 6170 (-7.0%) |
(I) | 1599.6 | 6871.2 | 989 | 81 | 10853 (459) | 11647 (+7.3%) | 9983 (-8.2%) |
表7 威力の評価(クリティカル時)
成功 | 威力 | 耐性 | 標本数 | 平均ダメージ | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(F) | 1598.4 | 588 | 971 | 6 | 1725 (155) | 1907 (+10.6%) | 1507 (-12.6%) |
(G) | 1599.6 | 2807.4 | 1026 | 62 | 6422 (321) | 7148 (+11.3%) | 5640 (-12.2%) |
(H) | 1604.4 | 4262.4 | 989 | 25 | 9256 (536) | 10189 (+10.1%) | 8353 (-9.8%) |
(I) | 1599.6 | 6871.2 | 984 | 53 | 15012 (840) | 16524 (+10.1%) | 13439 (-10.5%) |
続いて、図10から図12はこれらについての威力対ダメージのグラフです。
ダメージの正負のエラーは標準偏差です。対成功と同様にいずれの攻撃結果についても高い直線性が現れ、全領域で傾きが一意に決まりました。
成功と威力の同時評価
(A)から(I)までの試行では、成功と威力以外のパラメータが固定されています(実際には耐性は幅を持っていますが)。したがって、(A)から(I)までダメージは成功と威力の2変数関数で表すことができます。そこで、(A)から(I)についてかすりを除く攻撃結果別に線型近似を行いました。それにより式(1)から式(3)を得ました(:ダメージ、:成功、:威力)。また、各標本について近似式から予想されるダメージに対して実測したダメージを図13から図15にプロットしました。
防御時
(1)
ヒット時
(2)
クリティカル時
(3)
フィッティングした各式の係数はいずれも、成功のみあるいは威力のみを動かして得た一次関数の係数と3%以内の差に止まっています。加えて予想ダメージと実測ダメージの差は最大で300に止まっており、これは耐性の幅と一部のデータ点での標本数不足から十分説明できるものです。こうした事実から、防御、ヒット、クリティカル時における平均ダメージは、少なくとも成功項と威力項に限ってはその線形結合で与えられることが決定的となりました。
考察
第一稿との比較
第一稿ではより多くのパラメータを変化させた近似となっており、仮定していた多変数線型近似を通じて一緒に議論することができます。これは具体的には同一の攻撃結果における係数をそのまま比べればよいということです。すると今回得た各係数は、それぞれ成功、威力の順で防御時は0.50倍、1.09倍、ヒット時は0.93倍、1.09倍、クリティカル時で0.90倍、1.09倍となります。
パラメータの振り幅を大きくかつノイズを小さくしていることから、計算式としての正しさは改善されているという立場を取ります。すると防御時の成功項の係数の差が顕著であるのは、旧防御式の計算式(≠近似式)としての誤りを指摘することになります。一番わかりやすい話だと思い強調して書いた成功の重要性は梯子を外されることとなり、少し残念です。
その誤謬の原因としては前回の考察の節で取り上げた、1.近似の関数が悪い、2.関数がパラメータの全領域で一つに決まらない、3.標本が悪いの3つのいずれか、あるいは複数と言えるでしょう。ただし少なくともこのたびの調査によって、成功項と威力項に関しては1.2.は否定されたことになります。防御時の成功を除いて似たような変化になったことも、何か原因を探るヒントとなるかもしれません。
適当な標本数
手法の節で述べたように、標本数を増やすほど乱数による誤差を排除できます。一方で当然ながらそれはある一点を打つためだけの作業量が増えるということです。攻撃側のスキルレベルといった、依然ダメージへの具体的な影響が未知数であるパラメータに今後調査範囲を拡張するにあたって、これは無視できない問題です。また、単に手間がかかるというだけならまだしも、今回取り上げられなかった高成功攻撃でのかすり時といった、システム的に頻発させられないケースも存在します。
そこで、収集作業に優先度を設け、重点的にデータを増やす部分とそうでない部分を考えていく必要があります。本検証でいえば、高いダメージが予想される試行については、標本数が少なくならないように心掛けました。というのも、乱数によるダメージ幅は基本的に平均ダメージの割合で決まり、ダメージが大きいほど差分としては大きくなるためです。近似はフィットする式からの差分を小さくするように計算するため、誤差要因は割合ではなく差分で効いてきます。
luxさん(lux (@medarotter_lux) | Twitter)の調査によると、乱数幅として平均ダメージの±7%、もしくは±10%が確認されたとのことです。本検証はそちらの報告と調和的で、耐性が同一のデータ間のみで比較すると、最大値から最小値まで幅はすべてのケースで10%以内に収まっています。
また、近似式を予測式として実用する際にも、たとえばダメージ1000で200(20%)ずれることよりも、ダメージ10000で1000(10%)ずれることの方が問題視されるでしょう。
今後の展望
かすり時を除くと、寄与が不明な残りのパラメータは耐性、攻撃スキルレベル、補助スキルレベルの3つです。これらについても今回と同様の手順で、あるパラメータだけ動かし、他は固定という試行を繰り返すことで、乱数による誤差を排除しつつ特定のパラメータのみの寄与を明らかにしていくつもりです。このうち耐性についてはすでに値を振って少しだけデータを取ってみましたが、第一稿の仮定と異なりどうも寄与が一次ではないように見えています。
メダロット辞典によると、これまで触れませんでしたがメダルレベルは充填・冷却に寄与するとだけあり、技の成功、威力ならびに耐性や回避についての影響は明記されていません。書いていないというのが影響がないという意味であれば、リーグ以外の場を利用した調査が大変楽になる可能性があります。スキルレベルの寄与と合わせてそちらから着手するのも良いかもしれません。
まとめ
今回、成功と威力のダメージへの影響について追加調査を行いました。具体的には影響を知りたいパラメータのみを変化させ、かつ理論的な平均ダメージと見なせるまで各試行を繰り返すことで、よりノイズを排除したデータの抽出に成功しました。そのデータはダメージが成功と威力の線型結合で与えられると断言することを満足しました。この結果は第一稿の主張の一部を補強する一方で、包括的なダメージ計算には未だ多くの課題が残されていることも突き付けました。今後も同様の手法を用いて、パラメータの影響を一つずつ明らかにしていく必要があります。
おわりに
今回はここまで。理由はどうあれ最近メダロットSの検証が賑わっているような気がしてうれしいです。メダSパスのEX缶の使い道が無いと嘆いているそこのあなたも、検証をやりましょう!同じ攻撃の記録を延々と取り続けるこのたびのやり方はなかなか刺激に乏しく、わたし一人ではとても選べなかったと思います。今は解釈しやすい結果が見事に現れてくれて一安心といったところ。
前回同様非常に読みにくい仕上がりになっていると思いますが、不明点でも疑問点でも何でもお問い合わせください。それでは。
【メダロットS】ピリオド71、72
こんにちは。久々の振り返り記事です。ロックマンエグゼコラボの2週間をまとめて見ていきます。前回挙げたダメージ計算についての調査は続いています。情報が集まって再び結論がまとまるまでしばらく掛かりそうなので、気長に続報を待って(?)もらえたらうれしいです。
コラボ:ロックマンエグゼ
これはまた大型のIPとコラボしてきましたね。改めてメダロットというコンテンツの巨大さを思い知らされます。
個人的な話をするとエグゼはそれなりに世代です。地域の子どもがそのまま入学するような公立の小学校だと、学校や学年単位で遊びや文化が偏ったものになることは珍しくないと思うのですが、それでいうとわたしの同窓は圧倒的コロコロ派閥でした。家で遊ぶとなればまずデュエマ(当時はデュエルと呼んでいましたが)、ゲームならポケモン、玩具ならベイブレードと、見事なまでにコロコロ一色だったと思い返しています。わたしはGBAを買うのが遅かったのもあってエグゼのゲームは未プレイですが、持っている友人も少なくなかったです。というかコミックボンボンって2007年には廃刊してたのか。
ガチャ
ゲームは持っていなかったといっても、アニメはよく見ていたので思い入れはあります。細かな内容はほとんど覚えていませんが、「プラグイン」のカットがかっこよくて真似していた記憶。ローラースケートでの移動や電脳世界との行き来といった憧れを覚え背伸びしたくなる世界観、「トランスミッション」や「プログラムアドバンス」といった意味はわからなくても少年心をくすぐる横文字、これがまたうまかったですね。
当然ガチャも引いていきます。Wピックアップでそれぞれの一式排出率を下げないのがメダSの本当に優しいところ。有償限定の方もしっかりと旨みがありますが、今回は無償でも引ける方で挑みます。合わせて2.4%なら、100連でどちらも引けない確率は9%未満、楽勝ですよ。
ありがたいことに10連でフォルテイトを確保。ロックトランスも追いかけたいところですが、初めからどちらか引いた時点で撤退すると決めていました。
次週以降のリーグスケジュールが岩山(男型限定)、山地となっているので、合わせて他脚の男型機体がガチャで来ると読んでいます。間違いなく手持ちのウィークポイントなので、デッドクエーサー、ゴッドエンペラーレベルの脚部なら突っ込むことになりそうです。結局毎週ガチャ回してないか。
今週に入ってグリード、デコトム、アドルフィンの復刻が来ていますが、こちらもスルー予定。アドルフィンは見た目もモチーフも異色のKWGで心惹かれるところではありますが。
イベント
魔女の城形式の周回イベント、こちらの方はすでに2週目なので、目ぼしい報酬はすべて取りきっています。メダポンで諸々のアイテムの相場が崩壊した直後のイベントで、今後はイベント報酬の内容もそれに合わせてくると思っていましたが、特に変化はない様子。常にユーザーが出入りする基本プレイ無料型のスマホゲームで、課金とは無関係に特定の期間だけプレイしたか否かで取り返しのつかないハンデが生じる施策は、長期的に見てユーザーの呼び込みに不利に働くと思うのですが、どうなのでしょう。メダポンを周回しまくった身で言うのもなんですが。
報酬の目玉というと、イベント限定機体のハートロールと、同じく限定のオペレーターメダル、コラボBGM。BGMはTHEME OF ROCKMAN EXEが今のお気に入り。本家初代のトップ画面の曲とのこと。
ハートロールは右腕のハートハンド(フィールドリペア)に刮目。充填と冷却を単純に足した値は1418で、フィールドリペア持ちのパーツ中最速。恒常ガチャ星3機体のアクアクラウンの右腕アクアハンドが同じく1121で、比較すると1.26倍です。回復技の中でも回復量が多く使いやすいフィールドリペア、重視すべきは回転率でしょう。直す熟練度99で運用する場合、脚部の充冷にもよりますが1.1倍程度は回復効率に差が出るでしょう。
ちなみに今週に入って超襲来イベントが追加されましたが、特別ルールは敵メダルレベル限界突破のみ。やはりコラボでは易しめに設定されていますね。特に工夫も縛りもせずクリア。
メダリーグ
ピリオド70(サイバー)の結果
もう2期前ですが1.5周年杯の振り返りから。予告通り1000位以内でのフィニッシュ。ついでにベストランクとレートも更新です。編成は以前紹介したもの以上の編成が思いつかず、結局そのまま走りました。初めてのDX杯ランでしたが、1日に30戦もするのはしんどかった。やっても1日+200ptくらいで日を分けてプレイする方が性に合いそうです。
ピリオド71(森林)の結果
前期についても結果の報告から。安定の1000位着地でした。
編成についてもここで取り上げます。女型限定リーグを挟んで格闘機でのアサッシン頼りの編成が続いていたため、大きく変化を加えたいと思っていたところでした。
そこで行き着いたのがスリップ+フルチャゴーストショット+反射ガード編成。お試しを除けば12パーツすべてリーグ初採用です。
コンセプトは反射ガードを最も強く使えるパーティー。カウンター/ミラーガードは対応した攻撃を2回無効にするばかりか、相手の攻撃パーツにダメージを返し、火力によってはパーツを破壊まで追い込みます。ただ、この反射成功時の圧倒的アドバンテージの一方で、明確な弱点も多数用意されています。
全ガードを一撃で確定破壊するデストロイ、50%でガードをすり抜けるスルーアタック/ショット、ガード体制前の防御不能・停止症状攻撃、MFノンイバーシブ等々。そもそも格闘・射撃混合編成に対しては、一方の攻撃に対しては無力になってしまいます。
これらの弱点すべてに対応できてしまうのがスリップ攻撃。当たれば問答無用で機体はコマンドラインに逆戻り、ガードの障害となる機体を強引に帰し続けます。症状攻撃ではないため妨害クリアでも防がれません。
環境に最も多いガード対策はおそらくデストロイで、フルアタ編成でも1機体に1パーツのみの採用が普通です。そいつさえスリップで帰してしまえば、1往復の間にこちらのガード行動(-1)に対し、相手の攻撃行動2回無効で+2、行動パーツ破壊まで至ればさらに+2で、計+3という莫大なアドバンテージを得ることができます。スリップの重い冷却ペナルティを自然とカバーできるのもグッド。頭部完全ガードを使う場合も同じ動きをします。
とはいえスリップを外すと一転して不利になります。上の例でいえばスリップを外して1行動がほぼ無駄になり-1、デストロイでガードを持っていかれ-1、フリーになった相手の残り2機体の行動が刺さればさらに被害が拡大することに。一度かすり・回避が起これば損失を取り返すのは大変です。
ここまで雑にアドバンテージを換算しましたが、1回の攻撃でおよそ1パーツ破壊し合うゲームバランスとすると、1行動と1パーツの装備およびその破壊はおおよそ同じ価値と見なすことができます。ロボトルに用いるパーツは両者12個ずつ。互いに+12の状態からそれを削り合うゲームと捉えれば、その1/4に相当する3機1行動の成否がいかに重たいものかがよくわかります。実際にはリーダーが最後まで残るとは限らず、他のパーツを残して頭パーツが破壊に至ることも踏まえると、1行動の重みはそれ以上です。
そういうわけで当たればハイリターン、外れればハイリスクの技、スリップ。これを使うのに最も重要なのは、祈りです。ロボトル開始前に目を閉じて呼吸を整えましょう。勝負は最初の一撃で決します。
もちろんリスクを小さくするように編成を工夫してもいますが、限界があります。わたしは基本的にリスク低減重視で対応力のある編成より、強みをとことん活かすように組むのが好きですし。メダルの性格スナイパーは成功バフ(でも外すときは外す)、2番機がフルチャ+ゴーストショット+チャージショット+パワー+アラセでとにかく火力一辺倒なのも、使う度にリスクを負うことになるスリップを繰り返す前に、早期決着させるためです(でも外すときは外す)。フルチャゴースト(ショット)は今回初めて使いましたが、補助機体だろうが防御で最低でも3パーツは持っていける火力はさすがとしか言えなかった。
1番機の頭部のレーダーサイトは、流行りのコンシール・サイバーコア対策です。火力機+コンシール+ファーストエイド型パーティーおよびその亜種に二度完敗してから採用しましたが、1パーツと1行動費やすだけのタイミングとリターンが十分ありますね。これでゴーストショットが再び貫通するようになります。行動タイミングがずれてスリップが有効でないタイミングで使うこともあります。
2本のフリーズショットは、主に有利対面であるフルアタに絶対に負けないための用意。フルチャやスリップを使うよりローリスクだと判断すれば、こちらを選びます。採用率の高い妨害クリア相手に装甲役にしかならない症状パーツの採用は、個人的には嫌っています。ですがこの編成に限れば、スリップとゴーストショットを連打する以上の動きがない、それらを破壊から守るシステムがある、この2点でパーツ枠に余裕があることで採用に至りました。得意とする対面に取りこぼしをしないことも、勝率を高めるうえで非常に重要です。
最後に、スリップで剝がせるとはいえ、地味にガードが苦手でした。サイバーコア、ライフル、ミラーガードの三刀流機体相手に読み違えてボコボコにされた試合も。男型非Hv射撃デストロイがあれば、フリショよりそちらが優先ですね。早くバストロイヤー出しておくれ。
ピリオド72(サイバー、純正限定)の経過
ここまで長くなりましたが今期についても書きます。むしろ一番書いておきたかったのがここです。久々の純正戦でまたDX杯、使いたい機体がたくさんあって選出にとても悩みました。
結局選んだのはKWGのメダチェンジトリオ。1.5周年記念の有償ガチャでドークスが当たり、現在実装済みの3機体がそろったので思い切って一緒に使ってみました。
介護が必要と言われるメダチェンジ機の一括採用。別にネタ編成ではなく、結構戦えています。やるからには勝算を持って臨みたいので。とはいえレジェタッチまでわずか1敗しかしなかったのは、望外というより出来過ぎです。
KWGメダチェンジ機×3でレジェタッチ。まさか1敗で済むとは思わなかった。 pic.twitter.com/Gc1njbvYvl
— 袴矢 (@hakamaya63) 2021年8月12日
編成の肝はやはり、チェンジできないと置物になるティレルビートルをいかにしてチェンジまで持っていくかです。チェンジしなくても格闘機として一定の継戦能力があるドークス、ブラックスタッグに対し、ティレルはチェンジ前後で格闘と射撃のスキルが入れ替わるため、射撃振りの本機ではチェンジ失敗するだけで無力と化します。チャージ行動連打でメダフォースを放とうにもソニックショットは最低威力、スーパーサーチとブレイブも4行動掛けるには弱すぎます。ノンイバ持ちのテイマーメダルがあればあるいはという気もしますが、どのみち大した戦力にはならないでしょう。
そういうわけでターゲット管理は必至です。環境に少ないガード、どうしても調整が不可能だったアシスト以外の攻撃はティレルに向かわないようにしています。1、3番機ともHvパーツ無しかつ頭が非攻撃パーツ、どちらが欠けて完全な2対3になっても辛いので、分散させるのが好ましいと考えています。したがって脚狙いのハンターは1、パワーは3、腕狙いのスピードは1、スナイパーは3番機で受けるようになっています。
装甲チップでのチームパワー底上げも無いとさすがに厳しいでしょう。そもそものスペックが違うボス機体たちに正面から裸で挑むわけにはいかんのや。メダポン大回転で装甲Vチップの在庫に余裕がないわけではないですが、今回も含め基本的に1パーツに2枚着けることはあまりしないつもりです。使用頻度の高い脚部パーツの装甲を+1000とする恩恵は少なくないでしょう。ですがターゲット管理等の目的でチップの付け替えをしたくなった際、VとIVの併用で+800に留めておくことで、IVのみの廃棄でコストを下げられる柔軟さが持てます。腕に関しては脚部パーツほど装甲かさ増しの効果が低いとみて、多くはIV二枚挿しの+600としています。
こうして人事は尽くしました。あとは天命を待つのみ。そう、再び祈りましょう。アシストメダル持ち来るな、来てもサクリファイス外れてくれ。タゲ管通り攻撃してくれ。いっそ全部耐えろ、かわせ……。
何だかんだ言っても、チェンジに成功したティレルは類を見ない強さです。ぶっ飛んだ威力のブレイクは純正リーグにおいて非常に刺さりますし、CG30%のレーザーを連打するだけでも1パーツ破壊には十分です。チェンジ補助編成と異なり僚機には攻撃機が控えているため、種々のガードも強引に突破できなくはないです。
純正戦におけるブラックスタッグは、二脚の得意地形なら一線級ですね。今回はサイバーであるためチェンジ後も相性Sで戦えますが、非変形前提で妨害クリアをそれなりの速さで張れる並の格闘機としての運用で十分元が取れます。一応変形も考慮して、格闘、直す、二脚、飛行の4条件を所持しているメダルで唯一満たす、性格スピードのクワガタを採用していますが、特に不満は無いです。
ドークスは性能面でいえば最後の1枠に入れる理由は特にありません。単体での強みとして、変形後のアンチエア、アンチシーはサイバーだとインフィニティス、ブーケブライド、ヒールエンジェル、チェンジ後のブラックスタッグ辺りに刺さります。ただし潜水と飛行の採用率は高いとは言えず、何より今回の編成では攻撃を集める役であるため、パーツ破壊によるチェンジ失敗のリスクは小さくありません。チェンジ前のソードの回転率、ハンマーの火力は悪くないため、たまに有用なレーダーサイトと合わせて一定の仕事をさせてやりたいところです。もしチェンジ前の脚部特性がアダプターなら、脚部の装甲も増えるし局地戦で大活躍間違いなしなのだけどなあ。
終わりに
2週分まとめたことで今回も長くなりました。冒頭にも書いた通り、ダメージ計算のアップデートは続けていく予定です。引き続き質問でも情報提供でも何でもお待ちしています。それでは。
【メダロットS】ダメージ計算の試み #1
(8/21追記)この検証には続きがあります。ぜひ合わせてお読みください。
要約
メダロットSにおいて公式によるダメージの仕様は明言されておらず、これを明らかにすることはパーツの評価や戦術の組立をする上で重要である。そこで私はメダリーグピリオド66、67の自身のロボトルの録画から、攻撃ごとに攻撃機と被攻撃機の性能と状態、攻撃結果、ダメージのデータベースを作成した。そのデータを元に、平均ダメージを、攻撃結果ごとに攻撃機の技の成功、威力、該当スキルの熟練度、被攻撃機の該当耐性、回避、補助スキルの熟練度の合計の、多変数線型関数で近似する試みを行った。メダリーグにおける標本の採りやすさと実用性を加味し、攻撃スキルの熟練度、防御時以外の補助スキルの熟練度の合計でそれぞれ固定した式(1)~(4)を以下に記す。
かすり時(標本数12、)
(1)
防御時(標本数62、)
(2)
ヒット(防御無視)時(標本数34、)
(3)
クリティカル時(標本数13、)
(4)
ここでのパラメータはすべて地形相性や脚部特性等の補正をすべて掛けた後の値を参照する。また、以上の予測式は限られた標本から得られた限定的なものであり、あらゆる状況での実際のダメージにはそぐわない可能性がある。例えば今回私のよく使用したパーツのデータが標本数の多くを占めることで、特定の成功値に対して特定の威力値の結果ばかりとなると、成功と威力の効果を十分に分離できないといった問題が生じる。したがって今後も様々な状況下でのダメージの記録を増やし続け、新たな関数形の考慮も含め、より適切な計算式の模索をしていく必要がある。
導入
ダメージ計算の必要性
アプリゲーム『メダロットS』にはロボトルという対戦コンテンツが存在し、相手のパーツの破壊ないし機能停止に追い込むために、主に各パーツが持つ攻撃技を繰り出して戦う。こうした攻撃技を持つパーツには成功と威力というパラメータが設定されており、ゲーム内で確認することができる。その他にも耐性や回避、メダルの熟練度といったパラメータが存在し、こうした要素からロボトル中のダメージが算出される。
しかし、このダメージ計算式は非公開となっており、各パラメータの値が詳細に見られても、どの程度のダメージが出るかはユーザーにはわからない。これではパーツや技の比較や戦術の選択を的確に行うことが困難である。そこで、非公式にダメージを予測する式を決定することは重要である。
2021年8月現在、過去にもメダロットSのダメージ計算を試みた記録をネットで見ることができるが、実機でのダメージを十分に再現できているものは見つからない(個人ブログにつきこれ以上の個別のサイトへの明言、引用は避けます)。新たな予測式を確立する意義は未だに失われていないといえる。
手法
データの収集
メダリーグピリオド66(草原、純正限定)、67(水辺)において、私がダイヤモンド4からレジェンド帯で行ったロボトル(計35戦)の一部始終を録画した。それらの動画から攻撃パーツによる攻撃ごとに、攻撃結果(かすり、ヒット等)、ダメージ、その攻撃の成功と威力と熟練度、被攻撃機の該当するスキル(格闘/射撃)に応じた耐性と回避、補助スキルの熟練度の合計、その他両機の症状や脚部特性、脚部の破壊とリミットオーバー、ガード体制の有無を記録した(総数218)。
メダロットSには通常、貫通、乱撃、全体の4つの攻撃特性がある。たとえば通常攻撃の場合、攻撃対象となったパーツの装甲値を削りきって破壊すると、それ以上の装甲を持っていたときに与えるはずだったダメージはわからない。こうした事情に留意し、通常攻撃のパーツ破壊時、貫通攻撃の頭部破壊時は標本に含めない。また、乱撃と全体攻撃は分散ダメージの割合が明言されていることから、一部パーツを破壊した際にも、非破壊だったパーツへのダメージに適切な倍率を与えたものをダメージとして定義しなおすことで、標本に加えた。なお、wikiの一部ページには『分散した攻撃ごとに攻撃結果の判定がある』『乱撃は破壊済みのパーツにも判定があり、その際は分散ダメージを与えられない』という旨の記述があるが、今回の記録中にそれらの現象は確認されなかったことを添えておく。
ダメージ計算式の導出
得られたデータを攻撃結果ごとに分類し、それぞれで成功、威力、攻撃スキルの熟練度、耐性、回避、補助スキルの熟練度の合計を変数とする関数でダメージをフィットした。ここでは、攻撃結果が同じであれば、各パラメータやダメージの大きさ等によらず、全領域で同一の式が使用できると仮定している。また、成功、威力、耐性、回避をパラメータ(式の変数)として扱う際は、パーツに設定された素の値ではなく、諸々の補正をすべて加えた後の値を用いる。具体的には、任意のパラメータについて
という補正式になる(公式に言及は無く、ネットの情報や個人的な予想を総合して出した、正確性を欠く式です。今回の検証に用いる上で式の不正確さが深刻な影響を与えると考えたものは標本から除いてあります)。なお、実用上は最初の括弧の加算効果については、一部の脚部特性による効果を除いて、ロボトル中のステータス表示から補正後の値を直接参照することになる。計算にはMicrosoft OfficeのExcel 2013付属のソルバー機能を用い、最小二乗法によって関数の最適化を行った。
結果
収集データ
参照したロボトルの録画から、計218個のデータの収集に成功した。その全データのダメージを、威力に対して図1にプロットした。これら一点ごとにその他のパラメータである攻撃結果、成功、耐性、回避、両熟練度、脚部の有無等が個別にあることに留意してほしい。
防御時のデータ
全収集データ218個のうち、一方または両方の脚部が無かったもの、リミットオーバーを起こしていたもの、脚部特性で直接ダメージ軽減が行われたもの、攻撃スキルの熟練度が99でないものを除外し、それらを攻撃結果別に分類すると、かすり、防御、ヒット(防御無視)、クリティカルで標本数はそれぞれ12、62、34、13となった。なお、データ数が十分でなかった防御時以外では、補助スキルの熟練度の合計が51でないデータも標本から除外してある。
最も標本の多い防御時について、威力に対してダメージをプロットしたグラフが図2である。すると比例係数1.4程度の線型関係が現れた。
さらに補助スキルの合計が51かつ威力が1098から1211までの18個のデータについて、耐性に対してダメージをグラフにプロットした(図3)。これを線型近似したときの決定係数は0.52であり、近似式として見なすことはできない。このように耐性とダメージについて負の相関は見られたものの、線型関係にあるとする証拠は得られなかった。
攻撃結果別の近似式
防御時以外の攻撃結果についても同様の分析を行ったが、威力以外のパラメータについて明確な関数形は見つけられなかった。したがって、それらのパラメータをどの関数で近似式に組み入れるかを決める際に根拠に乏しい仮定が必要になる。このことに留意してほしい。
かすり、防御、ヒット(防御無視)、クリティカルの4種類の攻撃結果ごとに、それぞれの予想平均ダメージを、成功、威力、攻撃スキルの熟練度(実際にはで固定)、耐性、回避、補助スキルの熟練度の合計(防御時を除いてで固定)の多変数線型関数としてフィッティングを行ったものが以下の式(1)~(4)である。また、それらの予想平均ダメージに対して実際のダメージをプロットしたものが図4から図7である。
かすり時(標本数12、)
(1)
防御時(標本数62、)
(2)
ヒット(防御無視)時(標本数34、)
(3)
クリティカル時(標本数13、)
(4)
フィッティングの精度・妥当性の評価材料として各標本との間での最大の誤差(絶対値)を挙げると、かすりで157(9.3%)、防御で885(10.0%)、ヒット(防御無視)で294(9.5%)、クリティカルで713(19.7%)であった(括弧内の数字は予想ダメージに対する誤差の割合)。これらの大きさをどう見るかはゲームのシステムの乱数によるダメージ幅の情報が必要である。ただし少なくともクリティカル時の予想と実際のダメージはから逸脱している。加えて、これらの近似式はあくまで本検証で集めた標本にフィットしたものであり、実際のロボトル中に現れるあらゆる場面でのダメージに合うことを保証できないことに注意してほしい。
考察
線型近似の妥当性と課題
図2にある通り、防御時の威力がダメージと線型関係にあることは明らかである。加えて、威力の大きさに応じて関数が変化するという傾向も見られない。このことが、データの傾向から(パラメータの全領域で)線型近似を行う根拠である。
一方、得られた各近似式を見ていく。すべての式で各比例係数は成功、威力は正、耐性、回避、補助スキルは負、またはゼロとなっており、これは直感に合っている(ヒット時の耐性が無相関であるというのは疑問も残るが)。何より図4から図7を見る方が早い。グラフ上の式がに近いほど、標本をよく反映する結果が得られているといえる。これはあくまで標本を再現するに過ぎないため、近似式の妥当性を直接保証するものではないが、から外れている場合は基本的に近似式が正しくないことを示している。
ではの関係から外れているクリティカル時の近似式が正しくない原因は何であろうか。考えられるものとして、1.近似の関数が悪い、2.関数がパラメータの全領域で一つに決まらない、3.標本が悪いの3つが挙げられる。1.と2.は防御時やヒット時でうまくいった方法と同じものを適用しているため、クリティカル時でもうまくいくだろうという思考でやんわり否定できる。
都合が良いようにとられるかもしれないが、私がもっとも有力だとみているのが3.である。クリティカル時の標本の多くは技アサッシンで装甲が削りきれなかったものであり、どうしても似たような成功と威力の標本が占めてしまう。加えて、装甲を削りきったものはデータおよび標本に含まれないため、システム上の低乱数側を多く集めている可能性がある(このことは近似がうまくいかないこととは直接の関係はないが)。また、ダメージ3000から6000までの標本が12点に対し、それ以上のダメージの標本は集団から大きく離れた10548の1点のみである。たとえばこの1点が偶然高乱数を引いたものであれば、図7での係数が1より大きいことも切片が負であることもある程度説明がつく。
ただしこの考えられる3つの正しくない理由は、クリティカル時以外の近似についても当てはまることに注意しなければならない。より正しそうな近似を行う方法は3つのいずれが理由の場合でも同じで、標本を増やすということになる。多様な成功や耐性等を持った標本を加えることができれば、図2でみたようによりもっともらしい関数を予想することが可能となるし(1.の解決)、特定のパラメータやダメージの値を境に関数が変わるといった傾向も発見することができる(2.の解決)。パラメータの値に偏りを少なくし、標本を増やすにつれて自然と高乱数側も低乱数側もバランスよく集まる(3.の解決)。
もし近似式の不当性を主張する場合、近似式から実際に計測したダメージが大きく離れていることも根拠になる。防御時でいえば最大の誤差は885で、これはそのときの予想ダメージの10.0%に相当する。乱数が平均値および中央値を返すダメージ計算式から割合で定められているとするなら、±10%の幅は設定として十分にあり得る範囲ではないだろうか。
その他の関数形の可能性
威力以外については大胆な仮定をおいて進めてきたが、他の関数ではだめだろうか。そもそも耐性に関しては、初めは全く別の関数を想定していた。攻撃側による基礎ダメージを出した後に、それを耐性で割るようなマイナス1次項(反比例)として扱うものだ。ポケットモンスターシリーズのダメージ計算におけるぼうぎょ/とくぼうがそのような処理になっているようだ。しかし、この関数は実データに明らかに合わなかった。
今思えばこの不適合は納得できるものだ。というのもメダロットSの脚部パーツの耐性には、レベル90時点の素の値で比較しても300から2000までと、低いものと高いもので6倍以上の開きがある。マイナス1次として扱うと、値が6倍になればダメージは1/6倍になることになり(ただし定数項を加えれば差は小さくなる)、これはゲームをプレイしていての実感に合わないだろう。パーツレベルが違ってもある程度戦えるようにするという事情もあるのかもしれない。
現在用いている線型近似は、意味合い的には耐性が高い分だけ余計に被ダメージを差し引くとイメージすれば良いだろうか。今回の結果でいえば、防御時に耐性が500高ければダメージがおよそ300減る計算になる。かすり時の回避についても同様の影響が明確に出ている。また、かすり時とヒット時での耐性、かすり時以外での回避のダメージへの影響があるという証拠は見つかっていない。
応用
求めた近似式が、ダメージ計算式としてある程度適用できるとして話を進めよう。
まず、成功の影響が思いの外大きい印象を抱く。防御時とヒット時で成功項の係数を威力項の係数と比較するとおよそ0.5倍となっている。これは具体的には、同じ攻撃結果でのダメージを比較するとき、成功が100高いということは威力が50高いことに相当する。かすりの場合はさらに成功の比重が大きい。たとえば装甲、充填、冷却が大体同じ2つの右腕ライフルのどちらを装備するか迷っているとしよう。一方が成功1600、威力1400、他方が成功1000、威力1600なら、かすりやクリティカル率への影響抜きでも前者の方が火力があると評価ができそうである。
繰り返しになるが、ヒット(防御無視)時に関しては、最適化の結果耐性項の係数がほぼ0となり、耐性がダメージに影響しないという結果となった。正直これが本当かは疑わしくも思っているが、もし真実なら文字通り防御(耐性)を無視している。ハンマーやゴーストなどの防御無視攻撃が真価を発揮するのは、耐性の高い相手にぶつけたときなのだろうか。防御時のものと成功と威力の係数が似ているので、補助熟練度に51を代入して定数項にまとめれば、攻撃結果を横断したダメージの比較もわかりやすく行える。
今後の課題・展望
先に述べたように、近似式の精度以前に妥当性を補強するにはさらに標本を増やすしかない。それからやはり、ダメージの乱数の情報も必要である。また、今回入れられなかった熟練度の影響も発展させる方向の一つになる。ダメージ計算とは別に、攻撃結果の抽選確率といった調査等も、包括的なロボトルデータとして重要であろう。対人戦の実装予告もなされたが、ノーペナルティかつノーコストでのルーム対戦のようなものであれば、非常にパラメータの値の多様な良いデータが任意に取れることになるだろう。過ぎた願望であるが、この検証の公開が新たな議論や検証を呼び、メダロットSのロボトルのより深い共通認識の構築につながっていくことを期待している。
結論
メダロットSにおいて公式によるダメージの仕様は明言されておらず、これを明らかにすることはパーツの評価や戦術の組立をする上で重要である。本検証では、実機でのダメージの記録および集めたデータのダメージの近似式による再現を行った。その結果、攻撃結果ごとに一つの多変数線型関数で近似できることがわかった。
各式の成功項の比重は威力項と比較しておよそ半分であり、ロボトルのセッティングや戦略における成功値の重要性を問うものとなるかもしれない。
今後も得られた式が計算式として妥当かの追加調査も含め、標本数の増加によるより適当な計算式の追究、攻撃結果の抽選確率調査といったメダロットSのロボトルの深遠な理解のための検証が必要である。