はんまーに乾杯

メダロットSプレイ記

【メダロットS】攻撃時の威力計算手順の検証

 こんにちは。メダロットSでおそらく勘違いされ続けてきた仕様が判明した、そんな検証です。

概要

 今回は攻撃時の威力がどのような手順で計算されているかを調べました。メダロットSには攻撃パーツ自体の威力やメダロッターで引き上げられる威力の数値の表記があります。加えて基本的には技の威力を上げる効果には、その量までゲーム内で説明があります。しかし、ときにその曖昧な説明文の解釈には幅があり、ユーザーは本当の処理を知らないままプレイする必要があるという問題がありました。

 具体例を挙げましょう。射撃技レーザーは一定CG値以上で威力を1.5倍する技ですが、たとえば性格パワーのメダルの威力ボーナスについても1.5倍が掛かるのかどうかについての記述はありません。こうした加算と乗算の順番に加え、他の乗算効果を重ねた際にそれらは和と積のどちらで計算されるのかわかっていませんでした。

 乗算効果として地形相性、レーザー、ブレイク、シュートブースト、オプチカル、加算効果として強化チップ、メダロッター、メダルの性格ボーナス、脚部特性(シュラ等)を選び、これらを組み合わせて実際のロボトルで使用、ダメージを記録、これに過去に集めたダメージ計算の知見から実行威力を逆算し、各効果の計算手順を推定していきました。

 その結果、以下の事実が判明しました。

  1. パーツ威力、強化チップ、メダロッターには乗算効果が掛かる。
  2. メダルの性格ボーナス、脚部特性(、パーツランク効果)には乗算効果が掛からない。
  3. 地形相性以外の複数の乗算効果が同時に与えられるとき、それらの倍率の和を取る。
  4. すべての加算・乗算効果の計算を終えた後、得られた威力に地形相性補正を掛けて実行威力とする。

 1. から4. を式にまとめると次のようになります。

実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+ランク効果+脚部特性)*地形相性

 加算式のバフには、本検証で扱ったものの他に、一部のパーツのランク効果(ライフル、ガトリング等)があります(素で失念していました)。luxさんの検証内でパワーライフル星5のランク効果である威力+400分に、技の乗算効果(脚部未破壊で1.5倍)が乗らないことが発見されています。また、わたしが次回記事で掲載を予定している検証にて確認した、デストロイの成功ボーナスにグラビティの効果が乗らないことからも類推するに、パーツランクによる加算効果は性格ボーナスや脚部特性と同じカテゴリになると思われます。

 結果に戻ると、特に性格ボーナスに乗算効果が掛からないことや、乗算効果の重ね掛けが積ではなく和であることを勘違いされていた方は多いと思います。ロボトル中にステータスが確認できますが、そこに表記されている威力の値も実際の計算手順を考慮していません。

 あくまで調査した技ないしプラス効果による乗算効果、脚部特性による加算効果は、ゲーム内にあるもののうちの一部です。例外は仮にあっても一部だろうと想定していますが、このゲームには検証をするたびにつくづく想定外の仕様に泣かされてきたので、追加の検証をしていくかもしれません。急ぎで知りたい効果、すでに判明している情報等あればぜひ教えてください。また、この検証は網羅的にやろうとしなければ比較的簡単に始められるため、個人でデータを取りたくなった際に当記事が参考になれば幸いです。

導入

 まずはメダロットSの仕様を整理しましょう。攻撃技を有するパーツにはそれぞれ威力のステータスがあり、これを基礎として攻撃のダメージが発生します。この重要なステータスである威力には、パーツそのものの設定値の他に、値を増減させるものが存在します。それらの効果は、ゲーム内のテキストから大きく次の3つに分類できます。

(A) 任意の固定値を足すもの。

(B) 任意の倍率を掛けるもの。

(C) 効果量の明記がないもの。

 分類(A)、(B)、(C)をここでは簡単にそれぞれ加算効果、乗算効果、その他の効果と呼ぶことにします。実装済みの各効果をこの3つの大分類に振り分けたので、確認してみてください(図1から図4)。威力と同じく攻撃側のダメージ参照ステータスである成功についても、ついでに同様の分類をしました。

f:id:hakamaya:20220109204332p:plain

図1 加算効果(威力)一覧

f:id:hakamaya:20220109204408p:plain

図2 加算効果(成功)一覧

f:id:hakamaya:20220109204432p:plain

図3 乗算効果(威力)一覧

f:id:hakamaya:20220109204455p:plain

図4 乗算効果(成功)とその他効果一覧

 さて、上の分類を基に、実行威力を計算するうえで不明なことは大きく次の3点です。

  • 任意の加算効果に任意の乗算効果は掛かるのか。

  • 任意の2つの乗算効果が同時に掛かるとき、その倍率は和と積のいずれなのか。

  • その他効果に関する全般。

 3つ目はひとまず置いておくとして、本検証で調査したのが1つ目と2つ目になります。

手法

調査対象

 まず加算効果と乗算効果の関係について定式化します。パーツ威力aの技に、威力を+bする任意の加算効果(例:メダル性格ボーナス)と同1+c倍する任意の乗算効果(例:MFオプチカル)とを付与して攻撃したとき、その実行威力Aは

A=(a+b)*(1+c) (A)

A=a*(1+c)+b (B)

のどちらかで与えられることが予想されます。式(A)は加算効果にも乗算効果が掛かり、式(B)はパーツ威力だけが乗算効果の対象であることに相当します。

 同様に2つの乗算効果の関係について定式化します。パーツの威力aの技に、威力を1+b倍する任意の乗算効果と威力を1+c倍する任意の乗算効果とを付与して攻撃したとき、その実行威力Aは

A=a*(1+b)*(1+c) (A')

A=a*(1+b+c) (B')

のどちらかで与えられることが予想されます。ここでは式(A')は2つの乗算効果の倍率が積、式(B')は和となることに相当します。

 任意の2つの効果の関係がその他の効果の重ね掛け等の条件によらず一定だと仮定すると、調べたい2つの効果の組み合わせをしらみつぶしに式(A)か式(B)か判定していけば、あらゆる3つ以上の効果が同時に与えられたときの計算式に一般化することができます。

 とはいえ、効果の種類が多すぎてそれらすべての組み合わせを調べることは不可能であるため、調査対象として適当にいくつかの効果だけを選ぶことになります。乗算効果には常に効果下にある地形相性補正、技としては固定倍率かつ貫通持ちで計測が容易なレーザー、ブレイク、プラス効果としては倍率の高いオプチカルと掛ける方法が簡便なシュートブーストを代表として選びました。加算効果には強化チップ、メダロッター、メダルの性格ボーナス、脚部特性(シュラ、一部バレットレイン、アーティラリー)と基本的なものを網羅しました。

実行威力の判定

 マスクデータである実行威力およびその計算式をどうやって知るかですが、実際にロボトルを行い、知りたい効果を与えた状態で攻撃して得られたダメージから推定しました。ただし、過去に得たダメージ計算式をそのまま適用すると問題が生じたため、ダメージは威力の増加にほぼ・・比例して増加するという過去の知見を基本として、同時に取ったデータ系列内で個々の効果量とダメージとを矛盾なく説明できるのが式(A)と(B)のどちらであるかを個別に精査しました。

ダメージの決定

 実行威力の判定には、最も発生頻度が高くサイズを増やしやすい防御時のダメージのみを用いました。ダメージは平均値から正負に対称な乱数を含む統計量で、標本サイズを大きくするほど誤差を小さくできます。詳しい説明は#3をご覧ください。式(A)と(B)との威力差が十分区別できる程度の誤差に収めることが要求されます。

 また、成功もダメージを増やすステータスです(#2)。異なる成功を持つ標本を比較する際には、基準とする標本の成功からの差に0.4を掛けた値をダメージから引くことで補正をしました。

セッティング

 データの収集場所について、スイチュウフローとノーマルレーザーを攻撃パーツとして用いた計測は、2021年12月29日から翌年の1月6日までの期間限定で開催されていた、進撃!ロボトル「年末年始のロボロボ大進撃!」のステージ10-8のビーストマスター*3機を相手にしました(図5)。相手の特徴として、3機の耐性、回避、補助スキルレベルが同一であり、防御役としてそれらを区別せずに記録ができます。また、デストロイを含まない射撃パーツのみの構成であり、こちらが射撃(ミラー)ガードを張れば相手はCG行動のみするようになり、攻撃MFだけ撃たれないようにゴーストメダルのcアブソーバーを設置しておけば、邪魔されることなく自由に攻撃役を動かすことができます(図6)。cアブソーバーは検証には実に便利で、ゴーストメダルが復刻されたことを心からうれしく思います。

f:id:hakamaya:20220109205348p:plain

図5 限定進撃ステージ10-8

f:id:hakamaya:20220109210024p:plain

図6 メダロッター・オプチカルの編成例(1番射ガ→アンチシー、2番フルチャcアブ→射ガ、3番フルチャオプチ(6行動で切れる)→フルチャ→ミラガ→オプチのフルオート)

 また、バールーでの計測相手は同じく限定進撃のステージ10-10のゴッドエンペラー*3機を相手にしました(図7)。威力4倍となるHv3積であれば良いのではありますが、ビーストマスターと比較すると低装甲低射耐高回避で防御回数がやや稼ぎにくいため、前者の方がより適していると途中で気が付きました(バールーが最初の測定でした)。

f:id:hakamaya:20220109205257p:plain

図7 限定進撃ステージ10-8

 急遽加えたライジュウコウの計測時はイベント期間外で、常設のストーリー第4部6-1VHのヒメダッカー*3機を相手にしました(図8)。

f:id:hakamaya:20220109205508p:plain

図8

結果

低威力側での曲がり

 では、各加算効果(性格ボーナス、メダロッター、強化チップ、脚部特性)に任意の乗算効果が掛かるのかを見ていきます。

 男型右腕射撃アンチシーであるスイチュウフロー星5lv75(成功704、威力346)に各加算効果を付与して得た防御時のダメージが表1です。

表1

  成功 パーツ威力 加算効果 乗算効果 式(A) 式(B) 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 誤差 判定
スイチュウフロー 844.8 346 - 1.2 415.2 415.2 76 7.27 289 1.5 -
威力IV+III 844.8 346 50 1.2 475.2 465.2 75 7.18 348 2 保留
おめシスカリン 844.8 346 162 1.2 609.6 577.2 39 7.05 489.5 4.5 保留
シュラ 844.8 346 200 1.2 655.2 615.2 88 7.1 542.5 2.5 保留
パワー 844.8 346 300 1.2 775.2 715.2 46 7.11 682.5 5.5 保留

 選んだ4つの加算効果はいずれも成功は変えず威力を表中の値ずつ加算することができます。ここでの乗算効果は地形相性Sであることの補正で、その量は1.2倍です。これらの加算効果と地形相性の関係について、手法の節で考えた2通りの式(A)…加算にも掛かると式(B)…加算には掛からないにより求めた威力を表1に並べています。乱数幅の詳しい説明は#3に譲りますが、簡単に意味を述べると最大で7.2%程度を取るダメージの振れ幅のことで、これが広く取れているほどより真の平均ダメージに近いものが得られていると期待できる質の良い計測といえます。誤差範囲は99%信頼区間としました。

 得たダメージをそれぞれ実行威力がすべて式(A)であると仮定して散布図にしたのが図9、すべて式(B)であると仮定して散布図にしたのが図10です。このとき各点が直線上に並んでいなければ、仮定が誤りであることがわかります。

f:id:hakamaya:20220108190547p:plain

図9 加算効果と地形相性式(A)

f:id:hakamaya:20220108190817p:plain

図10 加算効果と地形相性式(B)

 一見図9、図10とも直線に見えますが、実はどちらも誤差では説明できないずれが生じました。そもそも回帰直線の傾きはそれぞれ1.09、1.30と、#2で得た1.46とはかけ離れています。この傾きの解離は、5点の式(A)と式(B)の組み合わせを変えても説明ができません。

 この段階では説明ができないのですが、実は原因はわかっています。どうもダメージは威力の1次関数であるというこれまでの結論が誤りだったようなのです。威力対ダメージのグラフはより詳細に調べると曲がっていて、特に低威力側で傾きは著しく寝るようになっていることが、同時に行った調査で判明しました(#4で公開予定)。

各加算効果と地形相性の関係

 気を取り直して地形相性がどの加算効果に乗るのかを見ていきます。低威力側で取ると傾きの変化が威力の逆算の邪魔になることがわかったため、使用パーツを男型左腕レーザーのライジュウコウlv90(成功963、威力1569)に変更しました。また、収集場所もストーリー第4章6-1VHのヒメダッカーに変わっていることにご注意ください(記事にまとめるまで図9で地形相性の説明ができると勘違いしており、気付いたときには進撃が終わっていました)。また、スイチュウフローでの調査では、効果なし同士で比較できる同成功で異なる威力を持つ他のパーツ単体でのデータを取っていなかったことも解析を難しくしました。そのため今回は、ほぼ同じ成功と遠すぎない威力を持つメガトルレーザーlv90(成功、威力)についても同時に取得しました。各加算効果を付与したデータと合わせて表2に示しました。攻撃機体の地形相性はすべてSです。

表2

  成功 パーツ威力 加算効果 乗算効果 式(A) 式(B) 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
メガトルレーザー 1160.4 1630 0 1.2 1956 1956 178 7.12 2976 -2.9 6 -
ライジュウコウ 1155.6 1569 0 1.2 1882.8 1882.8 154 7.23 2865 0 6.5 -
威力V+V 1155.6 1569 100 1.2 2002.8 1982.8 139 7.13 3043 0 7.5 式(A)
シュラ 1155.6 1569 200 1.2 2122.8 2082.8 143 7.22 3228 0 8 式(B)
パワー 1155.6 1569 300 1.2 2242.8 2182.8 139 7.21 3419 0 9 式(B)
アラセ 1155.6 1569 324 1.2 2271.6 2206.8 146 7.27 3457.5 0 8.5 式(A)

 得たダメージをそれぞれ実行威力がすべて式(A)であると仮定して散布図にしたのが図11、すべて式(B)であると仮定して散布図にしたのが図12です。

f:id:hakamaya:20220109214503p:plain

図11 加算効果と地形相性式(A)

f:id:hakamaya:20220109220512p:plain

図12 加算効果と地形相性式(B)

 図11を見ると、パーツ単体で取った2点を通る直線上には、高威力側の2点がわずかに上方にずれるものの、およそ乗っていることがわかります。このずれは加算なしの2点間の誤差範囲内の最大の傾きを取るような直線よりは十分下方にあることから、威力推定を疑う材料にはなりません。あるいはここでもわずかに下に凸であることを示唆している可能性があります。一方で式(B)で威力を算出した図12では、どの点も直線から外れています。また、図11の5点の回帰直線の傾きは1.54と、比較的過去のダメージ計算式の係数と近く、くわえて、同じ場所で同じくスキルレベル99の射撃で取られたluxさんのデータの傾き1.54とも一致しています。2つの図から、この威力範囲ではダメージは威力にほぼ比例し、かついずれの点も式(A)に基づいて威力を出すと解釈するのが自然です。したがって、地形相性補正はパーツ威力だけでなく、性格ボーナス、メダロッター、強化チップ、脚部特性のすべてに掛かることがわかりました(式(2))。

実行威力=(パーツ+チップ+メダロッター+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (2)

オプチカルと地形相性

 ライジュウコウ系列(表2)を比較対象とする1点の標本が表3です。これは男型右腕ブレイクのビッグノイジーlv90(成功972、威力745)をオプチカル下で取ったものです。オプチカルは射撃技の威力を2倍すると説明されているMFです。S地形下で2つの乗算効果で式(A')2.4倍あるいは式(B')2.2倍のどちらになるかを確かめます。

表3

  成功 パーツ威力 乗算効果1 乗算効果2 式(A') 式(B') 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
ビッグノイジー+オプチカル 1166.4 745 1.2 2 1788 1639 81 7.13 2729.5 -13.1 11.5 式(A')

 図11の6点に式(A')にて威力を仮定したブレイクを加えたグラフが図13です。オプチカルなしの6点の回帰直線に誤差範囲内で乗っています(ただし、最大の乱数幅を考慮すると真の平均値は直線から上方に外れていると見られ、この威力帯でもわずかに下に凸の曲線であることが示唆されます)。一方で式(B')で得られる威力は1639で、これは傾向から逸脱します。したがって、2つの乗算効果である地形相性補正とオプチカルが同時に与えられるとき、その倍率は2つの効果の積となることがわかりました(式(3))。

f:id:hakamaya:20220109222537p:plain

図13 オプチカルと地形相性

実行威力=パーツ*(1+乗算効果a)*地形相性 (3)

各加算効果とオプチカル、シュートブースト

 ひるがえってスイチュウフロー系列(表1)に戻ります。先の調査で地形相性補正は式(A)に基づき各加算効果に掛かることがわかっています。改めて図10ではなく図9が正しく、やはりグラフは下に凸に曲がっていることになります。次に、他の乗算効果(オプチカル、シュートブースト)を各加算効果と同時に与えたものを取り、それらの関係を調べました(表4)。以降、地形相性は全体に掛かるとして表中の表記は省略しています。

表4

  成功 パーツ威力 加算効果 乗算効果 式(A) 式(B) 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
スイチュウフロー 844.8 346 0 1 415.2 415.2 76 7.27 289 0 1.5 -
パワー 844.8 346 300 1 775.2 775.2 46 7.11 682.5 0 5.5 -
パワー・シュートブースト 1013.8 346 300 1.2 930.2 858.2 33 6.8 845.5 -67.6 9 式(B)
パワー・オプチカル 844.8 346 300 2 1550.4 1190.4 34 6.9 1203 0 12.5 式(B)
おめシスカリン 844.8 346 162 1 609.6 609.6 39 7.05 489.5 0 4.5 -
おめシスカリン・シュートブースト 1013.8 346 162 1.2 731.5 692.6 29 6.78 693 -67.6 8.5 式(A)
おめシスカリン・オプチカル 844.8 346 162 2 1219.2 1024.8 49 6.95 1244.5 0 9 式(A)
シュラ 844.8 346 200 1 655.2 655.2 88 7.1 542.5 0 2.5 -
シュラ・シュートブースト 1013.8 346 200 1.2 786.2 738.2 61 6.69 703 -67.6 4 式(B)
シュラ・オプチカル 844.8 346 200 2 1310.4 1070.4 55 7.19 1050.5 0 7 式(B)
威力IV+III 844.8 346 50 1 475.2 475.2 75 7.18 348 0 2 -
威力IV+III・シュートブースト 1013.8 346 50 1.2 570.2 558.2 88 7.2 500 -67.6 2 式(A)
威力IV+III・オプチカル 844.8 346 50 2 950.4 890.4 82 7.24 898 0 4 式(A)

 オプチカルが掛かったもの同士でダメージを比較すると、パワー>おめシスカリン>シュラ>チップの順に大きくなりました。驚くべきことに、加算効果カリン(+162)とパワー(+300)、シュラ(+200)の間にダメージの逆転が起こっています。これはオプチカルがメダロッター分には乗り(式(A))、脚部特性分には乗らない(式(B))と考えることで説明ができます。図9の5点にカリンとチップは式(A)、パワーとシュラは式(B)で威力を仮定した4点を加え、新たに散布図としたのが図14です。

f:id:hakamaya:20220109232143p:plain

図14 各加算効果とオプチカル、シュートブースト

 わずかに傾きの異なる2つの威力帯が滑らかに接続するように見えます。オプチカルの効果範囲がこのように限られているとする方が、単に大小関係だけでなく、定量的にも矛盾が生じません。ここからたとえば右から4点目の強化チップ(+50)にオプチカルが乗らないとしてプロットを左に60ずらすと、傾向から不自然に外れる場所に位置することになります。

 シュートブーストは倍率が小さいためにオプチカルのような加算効果量とダメージの逆転は起こっていませんが、やはり同様の効果範囲が適用できます。図14にはカリンとチップは式(A)、パワーとシュラは式(B)で威力を仮定して4点を取っています。なお、シュートブーストによる成功差はダメージから補正してあります。

 するとちょうど乗算効果なしの5点とオプチカルの4点の間を埋めるようにシュートブーストの4点が入りました。改めて全体としては直線ではなく凸関数となっています。こうしてオプチカル、シュートブーストのいずれについても、対象範囲はパーツ、強化チップおよびメダロッターであり、性格ボーナスと脚部特性には掛からないことがわかりました(式(4))。

実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a)+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (4)

 また、加算効果なしでシュートブーストとオプチカルの2つの乗算効果を与えた標本(表5)は、倍率が積の式(A')の2.4倍、和の式(B')の2.2倍から得られるどちらの威力を仮定しても、系列の曲線に乗りませんでした。代わりに、シュートブーストの成功に掛かった1.2倍は残したまま、威力の倍率をオプチカル分のみの2倍とすると、他のデータの傾向とよく合います(図14)。この理由ははっきりしておらず、たとえばMFとその他のプラス効果が同時に掛かっている場合の特別な仕様なのかもしれません。

表5

  成功 パーツ威力 乗算効果1 乗算効果2 式(A') 式(B') 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
シュートブースト・オプチカル 1013.8 346 1.2 2 996.5 913.4 53 7.25 814 746.4 5.5 例外
レーザー、ブレイク

 新たな乗算効果として、威力1.5倍のCG条件を満たしたレーザーを導入しました。CG60以上で男型右腕レーザーであるノーマルレーザー星2lv30(成功551、威力716)に、加算効果として5種(表6)、地形相性Sとは別に乗算効果として2種を順に与え(表7)、防御時の平均ダメージをそれぞれ記録しました。

表6

  成功 パーツ威力 加算効果 乗算効果 式(A) 式(B) 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
ノーマルレーザーCG60~ 661.2 716 0 1.5 1288.8 1288.8 64 7.27 1252 0 7 -
パワー 661.2 716 300 1.5 1828.8 1648.8 83 7.02 1731.5 0 7 式(B)
おめシスカリン 661.2 716 162 1.5 1580.4 1483.2 77 7.04 1640.5 0 7.5 式(A)
威力III+III 661.2 716 40 1.5 1360.8 1336.8 76 7.18 1343.5 0 6.5 式(A)
シュラ+200 661.2 716 200 1.5 1648.8 1528.8 87 7.29 1570.5 0 6.5 式(B)
バレットレイン 901.2 716 200 1.5 1648.8 1528.8 81 7.05 1689 -96 7 式(B)

表7

 

成功

パーツ威力

乗算効果

乗算効果

式(A')

式(B')

標本サイズ

乱数幅(%)

平均ダメージ

成功補正

誤差

判定

オプチカル

661.2

716

1.5

2

2577.6

2148

74

7.00

2422.5

0

11

式(B')

シュートブースト

793.4

716

1.5

1.2

1546.6

1460.6

80

7.26

1543

-52.9

7

式(B')

 これもスイチュウフローにオプチカルを与えたときと同様に、カリンとチップにのみ光学特性の1.5倍が掛かっていると考えることで、各加算効果のダメージの並びを説明することができます。追加した脚部特性バレットレイン(成功+200、威力+200、相手の腕パーツを1つ以上壊してから計測)については、増えた成功分を補正して比較すると、威力の加算量が同じ+200であるシュラと同程度のダメージで、レーザーの1.5倍は同じく乗っていないと判断できます。

 こうして得た加算効果付きレーザーの威力対ダメージの並びにオプチカル、シュートブーストを合わせようとすると、それぞれ式(B')に従って倍率を和で計算することになりました。これらをプロットしたのが図15になります。

f:id:hakamaya:20220110082411p:plain

図15 レーザーと加算・乗算効果

 さらに、被攻撃機が同じであることを利用して、スイチュウフローの系列とも並べてみました(図16、成功844.8で補正)。

f:id:hakamaya:20220110083723p:plain

図16 2つの系列のクロスチェック

 2つの系列が滑らかにつながり、一本の凸関数を構成しています。これは各威力を矛盾なく定義できている証拠です。同時に過去の1次関数で近似したダメージ計算式の適用限界を示しています。

 また、別の技の乗算効果として、Hvパーツ数nに応じて威力が1+n倍となるブレイク(女型右腕バールー成功991、威力502)についても同様の計測、解析を行いました(表8、表9)。今回はHv3の対ゴッドエンペラーであるため倍率が4倍と極めて高く、式(A)とするか(B)とするかで大きく威力が変わるため、効果の掛かり方がさらに判別しやすいです。

表8

  成功 パーツ威力 加算効果 乗算効果 式(A) 式(B) 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
バールー 1189.2 502 0 4 2409.6 2409.6 7 6.57 3168 0 194.5 -
威力I+I 1189.2 502 20 4 2505.6 2433.6 27 7.13 3326 0 44.5 式(A)
パワー 1189.2 502 300 4 3849.6 2769.6 13 5.62 3748.5 0 90 式(B)
おめシスカリン 1189.2 502 162 4 3187.2 2604 11 6.44 4311.5 0 145 式(A)
アーティラリー 1549.2 502 300 4 3849.6 2769.6 14 6.1 3965 -144 94.5 式(B)

表9

  成功 パーツ威力 乗算効果 乗算効果 式(A') 式(B') 標本サイズ 乱数幅(%) 平均ダメージ 成功補正 誤差 判定
オプチカル 1189.2 502 4 2 4819.2 3012 11 6.05 4119 0 130 式(B')
シュートブースト 1427.0 502 4 1.2 2891.5 2530.1 15 6.48 3509.5 -95.1 82 式(B')

 ブレイクの乗算効果もレーザーと同じくメダロッターと強化チップには掛かり、性格ボーナスと脚部特性には掛からないかつ、地形相性とは積、オプチカルとシュートブーストとは和とすると、ダメージが連続的な並びとなりました(図17)。

f:id:hakamaya:20220110092653p:plain

図17 ブレイクと加算・乗算効果

 ここまでで調べた地形相性補正を除く4つの乗算効果(オプチカル、シュートブースト、レーザー、ブレイク)は、共通した4つの特徴があることがわかりました。メダロッターと強化チップには掛かること、性格ボーナスと脚部特性には掛からないこと、地形相性との倍率は積、その他互いとの倍率は和となっています。これを未調査の乗算効果にも同様に適用されると予想すると、実行威力をより一般化した式(5)で求めることができます。

実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+脚部特性)*地形相性 (5)

考察

加算効果のランク効果

 概要でも触れましたが、加算式のバフには、検証時忘れていた一部のパーツのランク効果(ライフル、ガトリング等)があります。luxさんの検証内でパワーライフル星5のランク効果である威力+400分に、技の乗算効果(脚部未破壊で1.5倍)が乗らないことが発見されています。また、わたしが次回記事で掲載を予定している検証にて、デストロイの成功ボーナスにグラビティの効果が乗らないことがわかっています。これらから類推するに、パーツランクによる加算効果は性格ボーナスや脚部特性と同じカテゴリになるというのが現在の見立てです(式(1))。

実行威力=((パーツ+チップ+メダロッター)*(1+乗算効果a+乗算効果b+...)+性格ボーナス+ランク効果+脚部特性)*地形相性 (1)

一般化の限界

 導入の図1から4のように、実装されているバフの種類は膨大です。シュラ(とバレットレインとアーティラリー)の計測だけで一口に脚部特性とくくったのには正直無理がありますし、特定の効果について絶対にこうだと主張するには、その効果そのもので調べていくしかありません。他にないカテゴリにあるサクリファイスなどは特にそうでしょう。気になるものがあれば言ってください(もしかしたら調べるかも、というより皆さんもぜひやってみてネ、とりあえずダメージを記録するだけなら難しくないヨ)。

威力以外のステータスへの拡張

 おそらく式(1)は、成功を筆頭に他のステータスについても適用されていると考えています。たとえば格耐・射耐について、乗算効果であるホプライト(ガードパーツ数*25%アップ)はロボトル中のステータス画面にて反映されたステータスが表示されるのですが、その際加算効果を持つメダロッターや性格ガードのメダルを装備すると、メダロッター分にはホプライトが乗り、ガード分には乗っていない数値となっています。これは今回の結果そっくりです。これらも気になるものや高倍率・高影響のものから調べてみると面白いかもしれません。

威力対ダメージ

 ダメージが威力の1次関数ではなく凸関数だったという事実は、元々の目的ではありませんがこれまでの認識を覆す非常に重要な結果です(そのうえこのせいで今回の解析にとても苦労しました)。これについては次回記事ダメージ計算の試み#4で詳しく論じる予定です、ご期待ください。データの取得も解析も一通り終えており、残すは文章化だけなので、近日中に上がります、たぶん。

応用

 これまで常識とされてきた(?)性格ボーナスや脚部特性に乗算効果を乗せた威力計算は誤りだったとわかりました。この事実はこれまでわたしが行った検証結果の中でも実用性に富んだ数少ない情報だと思います。ぜひご活用してください。

 また、#2の成功・威力に関するダメージ計算では、標本の参照威力(と成功)が間違っていたことになり、わずかに係数が変わることになりました。いずれにせよ曲線である想定をしていなかったので、合わせて#4でブラッシュアップできたらと思っています。

まとめ

 今回は攻撃時の威力がどのような手順で計算されているかを、ダメージから逆算する形で調べました。その結果、パーツ威力、強化チップ、メダロッターには乗算効果が掛かる一方、メダルの性格ボーナスと脚部特性(、ランク効果)には掛からないことがわかりました。さらに、複数の乗算効果の倍率は和で表され、最後に地形相性補正を式全体に掛けることで、矛盾の無い計測ダメージの説明が尽くせました。判明した計算手順は、これまでの常識を覆すものであり、今後も未検証の効果や威力以外のステータスに、検証を拡張する余地があります。

 また、これまで威力の1次関数としてきたダメージの近似は一部の条件下でうまくいかないことが判明し、新しいモデルの必要性が示されました。